短編3[BL]
□花言葉は実らぬ恋
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しん→ひま
誰にも知られちゃいけない、この感情を何と呼ぼうか。
「しんのすけ!写真、撮って」
「ほいほい。ひま、もうちょっと右に寄って」
「こう?」
「そうそう」
「可愛く撮ってね」
「お兄ちゃんに任せなさい」
晴れた空の下。華やかになった野原家の花壇には満開になった黄色いチューリップが空に向かって咲いていた。
父ちゃんから貰ったばかりの中古のカメラを構えながら「綺麗だね」と庭を見渡す妹をレンズ越しに捉え、じっと目を凝らす。
笑った目元が母ちゃんに似ている。少しくせ毛なのは父ちゃん似だろうか。
そうやって紛れもなくひまわりは俺の家族なんだと、意味のない確認が癖になってしまった。
「しんのすけも一緒に撮ろうよ」
「残念。フィルムがない」
「ひまばっかり撮って楽しいの?」
「楽しいぞ」
ひまわりは俺の背中に飛びつきながら耳元でくすぐったく笑う。
普段からスキンシップは多い方だが、これは甘えているときの仕草だ。
「しんのすけと一緒だと落ち着く。なんでかなぁ」
「そりゃあ家族だからでしょ」
「…そっかぁ。家族だからか」
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