短編3[BL]

□魔法使い
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しん+あい



「あいちゃん」

「何ですの?しん様」


ガタンと大きく揺れる電車の中で、あいちゃんは窓から外を眺めていた視線をゆっくりと俺に重ね合わせると綻ぶように微笑んだ。

「傷一つないだろう綺麗な肌、艶のある美しい黒髪に大きな瞳、華奢な身体と小さな顔はまるでお人形さんみたいだ」とマサオ君が以前、言ったことがある。

華やかな存在感も彼女にとっては生まれ持った性質なのだろう。こうして目の当たりにすると、その意味がよく理解できた。

それ故に否応なく周囲の視線を惹きつけているにも関わらず、その端正な顔が、ひどく嬉しそうな表情をして俺を見つめる姿は他人からはどう映っているのだろうか。


「俺といて、あいちゃんは幸せなの?」

「幸せですわ。こうして、しん様の傍を許されることが、あいには幸福ですのよ」

「…そうなんだ」

「好きですわ、しん様」

その言葉が嘘じゃないってことくらいは表情でわかる。

けれど心の何処かではあいちゃんが俺に飽きてはいないか嫌いになっていないか、他に好きな男がいるんじゃないかと疑ってしまうんだ。

優しくしたい、愛されたい。なのに好きになればなるほど自分が欲深く、醜くなっていくのが分かる。それが怖い。

(……怖いんだぞ)


「あいちゃんを幸せにできる男じゃないぞ俺」

「しん様と一緒にいると楽しいですわ。それだけでは駄目ですの?」

「あいちゃん俺といて楽しいの」

「あら?あいの言葉を信じてくれませんの。あいは、こんなにもしん様を愛しているのに」

「俺、あいちゃんを不幸にしちゃうぞ」

「あいは、どんなしん様でも受け入れますのよ。不幸になんかなりませんわ」

あいちゃんは困ったようにくすくすと笑い俺を甘やかす。

嫉妬も今、抱いている欲深な部分も汚い心すら全てをそうやって正当化してくれる。いつだって、どんなときだって。

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