短編3[BL]

□秘密
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しん+ネネ



恋が怖い。

いや。もっと正直に…具体的に言えば恋をして失うことが怖い、だ。


「点Pは線分AQの中点であるから…って、しんちゃん聞いてるの?」

「聞いてるぞ、だからここは両辺を2倍にするんでしょ」

「あ、そっか」

開け放たれた窓からは絵具で染めたような空が見えた。夕暮れの風に煽られて教室のカーテンが、ひらりと揺れる。

ネネちゃんは柔らかで少し癖のある茶色の髪を指先でグルグル弄びながら教科書に視線を落とした。


「普段から真面目に勉強してないのに、どうして解けるのよ」

「はは、俺だってやればできるんだぞ」

「今度の中間試験、学年一位でも目指したら?」

「興味ないぞ」

「しんちゃんらしい」

ちょっとだけ目を伏せて、髪と同じ色をした長い睫毛が光の反射でキラキラして見える。

俺は、そんなネネちゃんの横顔を見つめながら、こんなふうに間近でゆっくり顔を見ることさえ久しぶりな気がして少しだけ落ち着かない気持ちになった。

昔はもっと自然としていた距離も最近では目に見えない境界線があるように思う。多分それは他人には分からないだろうけど。

椅子に背中を預けながら背伸びをする俺に、ネネちゃんはつられるように顔を上げ思い出したように口を開いた。

「この前、バスケ部の助っ人どうだった?他校との練習試合」

「勝ったぞ」

「おめでとう。いっそのこと入部くらいしてみたらいいのに」

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