短編3[BL]
□滑稽な病
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しん風しん
風間君は俺を病気だと言った。
誰かの愛情がなければ俺が生きていけないと本気で、そう思っている。そんな俺をお助けするのは自分だけだとすら勘違いしていた。
(…馬鹿で滑稽で、どっちが病気か分からないぞ風間君)
「お前、いい加減にしろよ。しんのすけ」
「カリカリ怒ってると白髪が増えるぞ、トオルちゃん」
「誰の所為だと思って…僕の周りの女の子に手を出すなって何回も言っただろ」
「…減るもんじゃないでしょ。それにあっちから誘ってきたんだぞ?俺のことが好きだって言って」
「黙れよ!」
たちまち右頬に痺れるような痛みが走って乾いたような熱と口いっぱいに広がった血の味で殴られたんだ、と認識する。
風間君ってば、暴力的だなぁと思っているとベッドの上に突き飛ばすように押し倒された。
むき出しの欲が、頬を撫でそれを愛と呼んでいる風間君が酷く滑稽に思える。
「寂しいなら…誰かを傷つけたいなら僕が相手をすると言っただろ」
「…風間君」
表情と声はバラバラだ。泣きながら俺を抱きしめシャツのボタンを外しながらキスを求めてくる姿は俺に迫ってきた女の子たちと何も変わらない。
風間君は俺を病気だと言った。誰かの愛情がなければ俺が生きていけないと本気で、そう思っている。
「ミヨちゃん…泣いてたんだからな」
「ああ、風間君が塾で一緒の女の子だったけ」
「彼女のこと、まだ好きなら慰めてやれよ」
「…風間君がそうしてあげたらいいでしょ」
「どうして僕が」
「風間君が、ミヨのこと好きだったの知ってるぞ」
「おまえ…!」
風間君の目が怒りで見開かれた。もっと罵られると思っていたのに頬を殴った以上のことはしないつもりらしい。
その手で、もっとぐしゃぐしゃにしてくれてもいいのに。だって俺、風間君の好きな女の子を泣かせたんだぞ。
なのに、まだ俺の病気を自分がお助けしょうとか本気で思っているところが風間君らしい。
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