ちびまる子/他短編

□黄瀬+黒子
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黒子のバスケ/黄瀬+黒子



キミを見ていると眩しいです。きらきらして黄瀬くんは太陽みたいな人ですね。

と黒子っちは他人からみたら分かりにくいほどの表情を少し緩めて、オレの隣に立った。

だったら、どうしてキミはオレの影にはなってくれないんスか。


「もう何十回もお願いしてるんスけど…どうしてスか」

「…黄瀬くんは優しい人です」

吐きだされる言葉はいつだって穏やかで、静寂のなかでもひっそりと息づいているように聞こえるキミの声。

此処に居るのに、本当はもっと遠くオレには届かない距離があるように思えてそれが何だか今は淋しくて、哀しくなった。


「それが問題なんスか?黒子っちに優しくしたら駄目なんスか」

「ボクは影です」

「知ってるスよ!だから別に火神っちや青峰っちじゃなくても光ならオレで十分しょ」


脇に抱えていたバスケットボールを、突き返すようにパスをすると黒子っちは躊躇いも無く、それを受け取った。

こんなときまで冷静なキミと、こんなときまで黒子っちを見失わないか必死になっているオレ。滑稽で、惨めで、でも何度だって同じことを繰り返す。


「振り向くでしょう、キミは」

「…黒子っち?」

「火神君も青峰君も立ち止まらないんですよ。それがいつかボクと決別することになっても」

「それが何スか」

「キミは優しいから、いつか立ち止まって、ボクに振り向く日が来ます」

黒子っちの無表情の中にも時折、混じるその感情の意味をオレは幾度となく持て余していた。

優しくて、嘘が苦手なキミの唇がゆっくりと真実を語るときの、その顔が好きっス。憎いくらい大好きっスよ。


「ボクは影です。光であるキミに振り向かれたら、役目がないんですよ」

「…そんな難しいこと…オレにはわかんないっスよ。黒子っち」

「黄瀬くんは優しい人ですね」

「黒子っちは…酷いっスよ」


「ボクが嫌いになれましたか?」

シュッと、投げ返されたボールを受け取るとキミは笑って、オレをみた。

思わず声が漏れる。乏しいくらい、オレの頭の中は何度だって立ち止まって、キミを待つ姿がリピートされた。

よく青峰っち達にお前は犬だ。駄犬だと散々、言われてきたけれど確かにそうなのかもしれないスね。

そうして、そんなオレを優しくも黒子っちが「駄目ですよ黄瀬くん」と、まるで叱るように困った顔をするから感情だけで息をしてしまいそうになる。



「…好きスよ。オレは黒子っちが…大好きだ」

「黄瀬くんは諦めの悪い人ですね」


「オレは黒子っちをおいていけないだけスよ」


end.

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