短編2[BL]
□呪った神に説いてみる
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マサオ+しん
君は哺乳類に愛される。だから、それが故にボクにも愛される。
(…これってさ、不毛で矛盾かな)
「ねぇ、マサオくん知ってる?あの噂」
「うわさ?」
「しんちゃんの」
「しんちゃんの噂なんて数え切れないよ、ネネちゃん」
色んな意味で有名人なしんちゃんは保健室の先生とデキているとか、OLと付き合ってるとか、家庭教師と寝てるとか、そんなことばかり。
どれが真実で、どれが嘘かも分からないけれど、全部が女性関係ってのは彼らしいとボクは思う。
廊下を歩きながら、ネネちゃんは周りの様子をそっと窺うと、少し戸惑いながらボクの耳に唇を寄せた。
「しんちゃんが男の子と付き合ってるって、噂なんだけど」
「…女の人、じゃなくて?しんちゃんに限ってそれはないよ」
「そうよね。ネネもそう…だと思うけど」
「ネネちゃん?」
「しんちゃんが…男の子とキスしてるの、ネネの友達が見たらしいの」
クラスメイトの喧騒で、ネネちゃんの声がほとんど聞こえてはこないが、冗談を言っているようにも思えない。
けれど、そんなこと聞いていない。本当に付き合っているのだろうか。もしそうならば一言くらい何かあってもいいじゃないか。
しんちゃん、好きだって言われたら誰だっていいのかな、とか考えれば考えるほど堂々巡りになって、そんな自分がどんどん嫌いになっていく。
「あ、しんちゃんとボーちゃん」
「おお!ネネちゃん。それにマサオ君も奇遇ですなぁ」
ネネちゃんの呼びかけで気づいたしんちゃんとボーちゃんが此方に顔を向ける。それに合わせて笑ってみせた。
そうすると、しんちゃんも表情だけで笑って、端整に整った顔立ちを崩してしまう。
(…しんちゃんはいつだってボクのヒーロー。哺乳類に愛される正義の味方)
「マサオ君、どしたの?さっきから不機嫌な顔してるぞ」
「何でもない」
「…何でもないことないでしょ?ネネちゃんは理由知ってるの?」
「え?ネネは…その、あれよ!マサオ君にだって不機嫌な日くらいあるわよ」
ねぇ、そうよね。マサオ君とネネちゃんはボクの背を大きく叩いた。変な音がした。人を叩く音じゃない。力加減を間違っている。
痛みに「うっ」と吠えるボクを、しんちゃんは薄い笑みを浮かべ、それでもボクの答えを待っているように見えた。
錯覚かもしれないけれど冷たい風が肌を刺すことでそれが現実だと教えてくれる。
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