短編2[BL]

□Come closer
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マサオ+しん



「しんちゃん好きだよ」と向かい合わせに座る、マサオ君がメニューを広げながら案外真面目な顔で此方を見ていた。

観葉植物に仕切られたファミレスは人目を気にすることはないけれど、つい俺の方が声を潜めてしまう。

「マサオ君は食べたいものを選びながら告白するタイプなの?」

「そんな趣向はないけど真剣にメニューと向き合う、しんちゃんを見てたら」

「…好きだって言いたくなった?それで言われた俺はどうしたらいいの。勝手だぞ」

「怒ってる?」

「怒ってないぞ」

「でも困ってるよね」と、まるで俺の言動を予測していたみたいなマサオ君の口調にムッとする。

昔は、ネネちゃんや近所の小学生にいじめられてよく泣いていたくせに。気弱なマサオ君はどこに行ってしまったと言うのか。

そもそも俺と同じくらいの身長なのに、体格が別物だ。

中学生の頃から空手やボクシング、漫画を描くのに必要な格闘技を身に付けたマサオ君に今じゃ喧嘩で勝てる気がしない。

いかにも短髪でスポーツマンらしい印象が際立って男前にも思える始末だ。ネネちゃんの情報じゃ、そこそこ女の子に人気があることも知っていたけれど。


「彼女を作らなかったのは、まだあいちゃんが好きだからと思ってたぞ」

「…好きだよ」

「だったら!」

「でも、ネネちゃんも好きだし、ひまわりちゃんも好きだよ」

「ひまはお嫁にあげません!」

「うん、だからしんちゃんがボクの家に嫁いできてよ」

マサオくんも少し緊張していたのかゆっくりと表情を緩めていった。その余裕も含めて嫌になる。

テーブルの下でマサオ君の足を踏むと痛みに顔を一瞬歪めただけで、苦笑いを浮かべ「なに食べる?」と訊いてきた。

(…なんで俺ばっかりこんなにイライラしなきゃいけないんだぞ)


「俺、男だぞ」

「知ってるよ。そもそも、しんちゃんを女の子だって思ったことないから」

「じゃ、どうして」

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