ちびまる子/他短編

□ひそひそ(大光)
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ひそひそ/大地×光路



他人に触れることは、今でも少しだけ怖い。

間違って相手の本音を訊いたら拒絶されそうで、俺の気持ちが溢れてしまうんじゃないかとか色々考える。

(…我ながら情けないと思うけどさ)


「こーじ!」

「…大地、走ってきたのか?汗びっしょりじゃん」

「ん、うん。おれ、こーじ待たせたら悪いと思ったから」

「はは、そーか」

それは多分、本心なのだろうと俺は思う。触れて確認しなくても大地は小さく笑って俺の傍で語りかけた。

けれど、いつもその視線に耐えられない俺は地面に落ちたガラスの破片を見つめている。


「こーじ?」

「ああ、悪い。なんか話してたか?」

「うん、あのね。おれ、こーじの傍に居ると安心するんだ。なんでだろ」

「…能力者同士だからかもよ。俺と大地は同じだから」

「おなじ?」

「そう、同じ」


じゃあ、この胸の痛みも?ふと伸びてきた大地の手のひらが俺の右手を掴んだ。

その瞳が声が、大地の心が戸惑うような縋るような色を帯びて俺に語りかけてくる。

笑みを浮かべる大地と目が合った瞬間なぜか胸が強く痛んだ。

(…他人に触れることは、今でも少しだけ怖いと言ったら大地はどうするんだろうか。この手を離してくれるんだろうか)


「こーじは、おれの気持ちわかる」

「…どーしたの?」

「おれも、こーじの気持ち分かりたい。こーじだけは触っても何も聴こえない」

「分からない方が幸せなときもあるよ」

「それでも、おれはこーじの全部が知りたい」


女の子を口説くときにはいい台詞だなぁ、なんて一瞬だけ考えて大地の手を強く握りしめた。


「こーじ?」

「…俺のこと知りたいんでしょ?いいよ、大地なら」

「おれ、こーじのこともっと理解する」

「…すげぇな、大地。そんな殺し文句どこで覚えてくるんだよ」

「殺し?おれ、こーじ殺さない。ずっと傍にいるんだ」

「はは、ずっとは難しいだろうな」

と言えば「そんなことはない」と主張するキラキラ眩しい視線。俺の耳を焦がしてやまない、大地の声が嘘みたいに俺を孤独から救ってくれる。

けれど、もっとはやく、その優しさと出会っていたなら俺は今、その優しさが残酷だなぁなんて想わなかったのかもしれない。

end.

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