ちびまる子/他短編

□恋する君へ
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花輪×まる子



残酷だけど、ベイビー。君は恋をしているときが一番、美しいよ。


「好きです、花輪くん。あたしと付き合って下さい」

「ごめんよ。僕には心に決めた人がいるんだ」

お決まりの台詞で女性を傷つけることには慣れているつもりでもやはり涙を落されるとついその雫を指先で拭い優しくしてしまう。

受け入れる覚悟もないのに残酷なことをしている自覚はあっても今更、本心は変えようがない。

(…女性がみんな、さくらクンだったのなら良かったのに)


「花輪君、モテる男も大変だねぇ。みぎわさんが訊いたら卒倒しそうだよ」

「さくらクン。もしかして聞いてたのかい?」

「屋上に行こうとしたんだよ。あたしゃ覗く趣味はないからね」

でも、ごめんよ。と伏せた瞳にキラキラ光る睫毛が長いことに気がついた。

君も立派なレディなんだね。いつの間にか大人になっていくのだろう、君も僕も、周りも。


「心に決めた人がいるんだ…って、みぎわさん?」

「冗談はよしてくれたまえ。彼女は…ただの友人さ。今もこれからも」

「もしかして花輪君。今もオードリーヘップバーンに憧れてるの」

「憧れてるよ。でも好きになるレディは別さ」

「花輪くんの理想って、あたしゃ想像できないよ。きっと美人だろうね」

「はは、そんなことはないよ。ただ隣にいるだけで安心できる存在さ」


眉間に皺を寄せ僕が言った言葉の意味を真剣に考えている。

僕はそれをじっと見つめ、この腕に抱きしめたくなる衝動を理性で飼い殺した。

さくらクン。君を好きになった理由を僕は考えるばかりで一向に報われたことがない。

僕の周りにはお金持ちだからと言って寄ってくる女性や姿形で判断するような、僕の本心なんてどうでもいいレディばかりだよ。

本当は僕がどれだけ寂しがり屋か、弱音ばかり吐く生き物かしらないでいる。知ろうともしないでいる。

(…けれど、さくらクン。君だけはどんなレディよりも特別さ。僕が安心できるのは君の隣だけじゃないかな)

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