D.Nover再録
□俺の碧
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心に灯された輝-心に灯されたヒカリ-
「ねぇ、いつまで僕から逃げるの?」
その放たれた言葉は綱吉の心を酷く動揺させた。
だが、けして顔には出さない。
―――この人どこまで解っているのか…
扉に向けていた体をゆっくりと雲雀の方に向けながら「綱吉」のつもりで笑う。
「何言ってるんだよ。教室戻るの!寝坊してサボリぎみになっちゃったからね」
「今から言ったら教師に叱られるのが落ちだよ。それじゃ目立ちゃうんじゃない?」
うっと言葉が詰まった。
確かに自分は目立ちたくない、いや目立ってはいけない。
だから、今から授業が始まってから30分くらい過ぎる教室に帰るくらいなら、もういっそサボってしまった方がいい。
だが、ここにはいたくない。
これ以上彼の近くにいてはいけない。
「じゃぁ、校内一周でもして来るよ。暇だし。」
「なぜ?暇ならここにいればいい。」
沈黙。
二人の間に冷たい風が流れている様だった。
綱吉も雲雀も口を閉ざしたまま。
だが、綱吉目線を外しているが雲雀は雲りのない漆黒の瞳でずっと綱吉のことを見ていた。
―――まずいな、この沈黙は流すぎる。……なんでだろう、
恭弥には嘘がつけない。
二人の間にある冷たいものは綱吉が一方的に向けているもの、壁を作ってみれば雲雀もこちらへはこないと思いたかったから。
でも、雲雀にはやはりきかなかった。
彼はその壁をどんどん壊そうとする。
しかも綱吉はそれを拒めなかった。
初めて自分を見てくれた人だから。
「ねぇ、」
二人の沈黙を破ったのは雲雀の方だった。
「どうして最近来ないの?」
「え、」
「…応接室。」
「あぁ……いろいろ忙しくて。」
「じゃぁ、用事が終ったらまた来なよ。」
君がやった方が他の委員会より仕事がはかどるっと比較的優しい声で言われる。
―――やめて。
心が痛かった。
―――これ以上俺に近付かないで、
苦しかった。怖かった心がどんどん開いて行ってしまうのが…
「…い、かない」
ギュッと握られた拳が少し震えていた。
「…行かない。」
掠れていた声が二回目にははっきりと言葉になる。
「どうして。」
冷たく響く声にもう消えたくて仕方なかった。
「行きたくないから。」
「何故。」
疑問形のはずの言葉が疑問形にならずに屋上に響く。
まるで答えを強制される様に。
「ねぇ、綱吉。どうして僕から逃げるの。」
「なに言ってんだよ、別に逃げてないっ「じゃぁ、どうして来たくない?」………」
追い詰められた言葉。
そして、苦し紛れの言葉。
「……恭弥の側にいたくないから。」
フゥ…
聞こえてきたのは小さな溜め息。飽きれたと言われている様な小さな物。
「…綱吉は僕が嫌い?」
―――え?
予想外だった言葉に思わず目を見開いてしまった。