D.Nover再録

□安心できる場所
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彼は強い。

だが、彼は弱い。


普段、教室や街にいる彼は皆から「ダメツナ」と呼ばれている。

だが、本当は彼は…











応接室に近く一つの気配がある。

普段ならそんな弱い草食動物の気配など全く気にならないが、今感じた気配はいつも近くにいる人の気配。

雲雀はチラリと壁に掛かった時計を見る。



―――ちょうど彼がいつもくる時間だ…



時計を見るなり雲雀は椅子から立ち上がり、紅茶のビンがおいてある棚へと行った。

紅茶の準備をしながら近付いてくる気配を待つ、するとコンコンッと部屋をノックする音が聞こえる。

どうぞっとだけ答えれば、失礼します…と小さく言いながら表向きの「ダメツナ」に成り済ました恋人が入ってくる。
そしてパタンとドアを閉じた。

「そろそろくると思ったよ、今紅茶入れるから座りな。」
雲雀がそう言うと「ダメツナ」は一気に雰囲気を変えて行った。

「ありがとう、恭弥」

さっき、応接室に入ってドアを閉めた時から見た目はさほど変わらないものの立ち方や目付きだけが少し変わっている。何よりさっきまでのオドオドした空間は全くなかった。

これが本当の沢田綱吉。
彼が雲雀の恋人である。


ソファーに綱吉が腰掛けるとちょうど雲雀が紅茶をローテーブルに置く。

「刺客?」
「うん、二人。」
「そう。」
「弱かったけど。」
「フフッ」

紅茶を飲みながら淡々としゃべる綱吉は雲雀にだけ見せる姿。

普段、ボンゴレ10代目候補の綱吉は子供の頃から刺客に狙われることが多かったため、普段は目立たない様に「ダメツナ」を演じていた。
そんな綱吉はゆいつ心を許した相手である恋人の雲雀の前でだけ「綱吉」になれていた。

つまり雲雀がいる空間は綱吉のゆいつ安心できる場所。


「じゃぁ、5、6時間目はさぼる?」
「うん。眠いし。」
「昨日は寝れてないんだ。」
「まぁね、まぁ家でも熟睡なんてできないし。」
「寝るためだけにここにくるのかい?」

「いや、ここにくれば恭弥に会えるじゃん。それに…」
「何?」
「俺が熟睡できるの恭弥の隣りだけだし。」

意地悪な笑みを浮かべた綱吉はその後、なんてね。とだけいいブレザーを脱いだ。
すると雲雀は向かいに座っていた所から立ち上がり、綱吉の隣りに座る。

「え?」
「じゃぁ、ここで寝れば?」

そう言うと、膝をポンポンと叩く。

「や、やだよ!恥かしい!」
「いいから。」

半端無理矢理綱吉を膝枕状態にし雲雀は満足そうに笑った。

「ん〜//じゃぁ、起こさないでね。」
「はいはい。」

観念して、目を閉じる綱吉の頭を撫でてやるとやはり疲れていたのかすぐ寝息をたて始めた。






―――君の休める場所が僕の隣りなら僕はずっと側に いる。



柔らかい笑みで笑いながら雲雀は綱吉のおでこにキスを落とす。

「おやすみ。」





END

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