story

□露草
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※パロ


「バーカ!!」
「!」

突然投げつけられたのは広告の裏を代用して作られた単純でおおざっぱな地図。意味がわからずそれを眺めながら口を開こうとすれば、どういうわけか顔を真っ赤にした露草は全速力でその場を去ってしまった。え、何、これ何?あまりに突然過ぎて頭がついていけない。露草の目的がわからず一人うーんと唸っていれば、気付いたことが一つ。これはたぶん見た感じここら辺の地図のように見える…ような、そうじゃないような。でもコンビニの位置と交差点に見覚えある気がする。たぶん。ああもうわからない。
人知れず盛大にため息をついた。

「これ見ていつどうしろって言うのさ…」

地図らしきものとにらめっこをしていると、タイミングが良いんだか悪いんだが携帯のバイブが鳴る。あまりに突然過ぎて一瞬ビクッと飛び上がりながらも、携帯を開いた。ああ、メールか。

「え…露草から…」

受信ボックスに1件。露草から。本当に彼は何がしたいんだ。意味がわからないままメール本文に目を通せば、そこには『土曜日の午後1時からライブあるから来い!』と。

なるほど、ライブ。

ちゃんと口で言えばいいのに言えないなんて。可愛いなあ。本人に言ったら怒られるだろうけど。一人そんなことを思いながらクスリと笑みを零した。そして『楽しみにしてる』と絵文字付きで送ればまた『バーカ』と一言。きっと顔を真っ赤にしながら返したんだろうな、なんていらない想像が自然と脳裏に浮かんだ。








そして土曜日。約束通りにライブハウスに向かうと顔を真っ赤にした露草から今度は飴玉を大量に投げつけられた。…地味に痛い。
しかし特に何も考えずにその飴玉の包みを開ければ、不思議なことに包みの裏に文字が。やや雑にも見えるその字は見覚えがある。いや、確実に知ってる。露草の字だ。

「えー…と…?『い…つも、ありが…とな』…?」

いつもありがとな

もう、だから口で言いなさいって。何を言うにしたって一番伝えなきゃならないことは言葉以外。
思わず苦笑しながら、素直じゃないバンド少年の活躍を目に焼き付けた。




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2009103

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