泡沫−ウタカタ−

□言の葉ひとひら
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気に入らない。気に入らない。気に入らない。
あのイタチという男。済ました顔をして自分の前を歩く。目の前にある背中を睨みつけ、キツく唇を噛んだ。
今すぐにでもその頭に後ろからクナイを突き刺してやろうか。
そっと袖口に忍ばせたクナイに手を伸ばす。クナイを握れば無意識に汗ばむ手のひら。目を細めて殺意を研ぎ澄ますように、手のひらに力を込めればざわつく胸中。しかしそばにいた奇妙に男に気付かれ、おとなしくクナイから手を離した。

「往生際が悪いなガキ」
「ちっ…ガキじゃねえデイダラだ…うん」
「おい」
「!」
「ついたぞ」
「………」

ああもうムシャクシャする。いきなり自分が潜伏していた寺に押しかけ、強引に引っ張っていく奇妙な3人。おとなしく後を付いてくれば、たどり着いたのは奇妙な洞窟。そこは文字通りのガランドウそのもので。何の意味があってここにいるのか全く理解ができない。
一体何なんだ。説明を求めるようにじろりと睨めば、案の定、ヤツは無視を決め込む。

「リーダーと連絡は取れましたか?」
「ああ、一応な。…ただ」
「?」
「…代わりにいるはずのヤツがいない…」
「!ああ…彼女ですか」

そしてこいつらの話も理解できない。
1人苛立ちを表情に浮かべていれば、不意に今まで聞いてきたものとは全く質の違う声が響いた。

「ああ、イタチ。それ新人?」

響いた声に振り返れば、そこにはこの奇妙な3人同様に漆黒の装束を身に付けた女。年はあのイタチとかいうヤツと同じくらいに見えた。

「…遅いぞ」
「仕方ないでしょう?私だっていきなり言われたんだから。」
「オレは待つのは嫌いだと言ったはずだが?」
「だったらアンタが面倒みなさいよサソリ」
「それはごめんだ」
「アンタのパートナーでしょう」
「話が別だ。ガキは好かない。」
「外見ガキなアンタがガキだ何だと騒ぐと腹立つ」
「串刺しにするぞ小娘が」

何だコイツら。無理やり連れてきておいて人をお荷物のように言って。表情をひきつらせてそんなヤツらのやり取りを見ていれば、女はいかにも仕方ないというように深く溜め息をつきながら自分を見た。

「………」
「んだよテメエ…うん」
「いや、ようこそ少年。陰鬱なる我が組織へ。」
「は、」
「文句ならリーダー一人にぶちまけて。私だって同じようなもんだから。ああ、ついでに君のパートナーはそこの傀儡師ね。何かあったらそいつに頼って。あと気に入らなくても組織内の人間は殺さないように。特にそっちの写輪眼はいけ好かないなんて同性からは評価されやすいけど実力はあるからね。返り討ちに遭わないように。そんなわけで私が言いたいのは単純に私に迷惑かけないで欲しいってだけだから。よろしく。」
「な…」

一気にまくしたてるように紡がれた言葉たちに、返す言葉が見つからずに戸惑う。しかしよくよく考えたらこの女はただ単に自分の世話係辺りを任され、それを面倒に思ってるだけだ。それを察すると同時に一気に頭に血が上り、プツンと何かが切れた。

「ふざけんじゃねえぞこのバカ女!!オイラを低脳に見やがって!だいたいその態度は何だ!ああ!?」
「あーはいはい。ごめんよ。遠路はるばるありがとう、歓迎するよ新人。じゃあサソリさっさと任務にその子連れて行きな」
「任務なんかねえよバカ」
「こんの女…!」
「ちょっと、出会っていきなり新人に悪印象さを植え付けてどうするんですかアナタ。職務怠慢ですよ?」
「はいはいはいはい」
「………」

両手で耳を塞ぎうるさいとアピールする女。それに盛大に溜め息をつく他の連中。何だコイツ!最悪だ。イタチへの殺意を忘れて苛立ちのあまりに彼女を睨んでいれば、他の3人は何の未練も見せずにそこからさっさと去っていく。そして洞窟に残された自分と彼女。思い切り欠伸をされ、ますます苛ついた。

「お前…!」
「他のメンバーにはそのうち会えるだろうからわざわざ紹介しなくていいよね」
「なっ」
「はいこれ装束。任務ない時は自由にしてていいから。ちなみに任務はリーダーから直接言い渡されるからね。じゃ。」
「おい待てコラ!」
「え?」
「え≠カゃねえよ!」
「あまり怒鳴るのは体に良くないよ?」
「お前のせいだろ!お前の!つーかテメエやることあんだろうが!うん!?」
「ああ…確かに君に組織やらアジトについて教えとけとは言われてるね。でも面倒だからさ。サソリに教えてもらいなよ」
「本当に職務怠慢だなテメエ!」

装束を受け取りながら悪態をつけば、彼女は笑顔でありがとうなどとふざけたことを言う。ああもう何を言っても通じないのか?深く溜め息を零しながら俯けば、彼女はまじまじと自分の顔を見てくる。何なんだ、一体。思わずたじろぎ一歩後退すれば、彼女はクスリと笑った。

「…なに笑ってんだよ…うん」
「いや…何、その年でこんな組織に入るもんだからさ。てっきり力ばっかり欲しがるような詰まらない人間じゃないかと思ってたんだ。」
「はあ?」
「いや、だってイタチが来たときなんか今にも死にそうな酷い顔してたから」
「何言ってんだアンタ」
「要するに犯罪の際に他人と一緒に自分を殺してないってこと」
「?」
「君、いい意味で期待を裏切ってくれたよ」
「!」


「本当に面白いね、君。最高!」


「……!」


屈託ない笑顔で言われたから、何て返したらいいのかわからなかった。
ただこんな顔して笑うなんて。普通≠フ女と変わらないじゃないか。
ポカンとその笑顔を眺めれば、案内するからついておいでと片手を差し出される。

彼女のそんな様子に何を言っていいのかわからなかったから、代わりにその手を痛いくらいに握ってやった。




/end


*************
あとがき

デイダラのキャラすら忘れてしまった一品(泣)
アンケートでデイダラの歓迎会という素敵なネタをいただけたのに出演キャラが少ない上にギャグとも言えなくなってしまいました(汗)
その上デイダラの扱いが酷い←
最近は何やら年上主人公が多いですね。

20090906
 

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