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remember.
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ねぇたまには私の事


思い出してくれているかな。






家にいても学校にいても、思い出すのはあなたばかり。
あんなに幸福だった日々が、もう過去なんて信じられないよね。


だって私の部屋にはまだ、あなたの痕が消えていないよ。




……とても、好きだった。




もらった試合の時のボール、今でも部屋に飾ってあるよ。
文化祭の写真も、初デートで撮ったまだぎこちない二人のプリクラも、まだ捨ててないよ。




……大好きだった。




私の髪を撫でる大きい手が


手を繋ぐと絡まるあなたの長い指が



ウエーブのかかった柔らかい髪も


伏せると影が出来る長い睫毛も




愛しそうに見つめてくるその瞳も


儚げな笑顔も







すごく、大好きだった。






礼儀正しいのに、意外と自信家で。

そのくせに心配性で。


制服のスカートを短く折って履いた日は、私の後ろにぴったりくっついて。怒った顔して。




『枕が変わると眠れないんだよね』


なんて病院で不機嫌になったりして。





……ねぇあなたは、私の事を思い出してくれてるのかな?


そうだと、嬉しいな。









『全く、しょーもない子だね、君は』




「……精市」




『はは、冗談。可愛いよ』




「……精…市」




『…うん。ずっとって約束できるよ』




「………精市」




『俺はずっと、傍にいるから』







「―っ…」










精市






精市。









もうあなたの隣にはいられないけど。





たまには私を思い出して




そして私の思い出を



どうか懐かしんで下さい。








END


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