◆駄文部屋
□さぁこれからどうしましょう
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まったく…いい加減に気付いてくださってもよいのではないでしょうか…陛下?
「紫苑…アンタ…無防備に程があるだろう。」
小さくため息をつけば、きょとんとしたような表情を浮かべる。
「服くらい着たらどうなんだ。」
「え?…あぁ!でも暑いんだもん」
だもんって…と頭が痛くなる。ただでさえ我慢しているというのに上半身裸なんか耐えるのも大変だ。
よく我慢していると俺の理性を褒めて欲しいくらいだった。
「アンタな…風邪引かれても困るんだよ。わかったらさっさと服を着ろ。」
無理矢理視線を剥がすとそこらへんにある服を紫苑に投げつけた。
「わっ!?…び、びっくりした…」
器用に顔でキャッチ…つまりは顔に服が当たった訳だが、驚いたような紫苑の声になんだか微妙にすっきりした。
「あれ…?でもこれ…」
諦めたのかもぞもぞと小動物のように服を着始める紫苑が、戸惑ったように声を上げる。
「…はぁ…なんだよ?」
またいつもの質問攻めかと小さくため息をつく。
質問攻めよりも、紫苑を攻めたいなどなんとも不健全なことが脳裏を過ぎる。
「……っ!?」
ゆっくりと目を開ければ、何故か俺の服を着た紫苑の姿。もともと少し大きめの服は俺と紫苑の身長差もあって、紫苑が着ると指先が見える程度だ。
ああ…なんという可愛さだろうか。押し倒したい気持ちを理性を総動員して抑える。
「ネズミの…おっきいよ…」
身長差が悔しいのか唇を尖らせ、なんとも爆弾を落とす紫苑に頭痛がした。
情事中の台詞では?と思うくらいの大胆な言葉に理性はもう蜘蛛の糸くらいだ。
「紫苑…少し黙れ。」
はぁっと大きくため息をつくと、頭を冷やそうと軽く頭を振った。
だいたいなんでこの鈍い坊ちゃんは気づかない。
これだけキスやハグをしているのにも関わらず、ネズミってば…からかわないでと真っ赤になるというオプション付きの可愛い表情で言う始末。
何故気づかないのだろうか…。理性を保つのもだんだん疲れてくる。なによりも、近くにいるのにも関わらず、手を出せないことにイライラが募る。
「ネズミ…?」
ああ…そんな風に名前を呼ぶな。
もういっそのこと心地好い声が枯れるまでよがらせてしまおうか。
「…あれ…?…ネズミ?」
ああ…そんな心配そうな目で見るな。
もういっそのこと綺麗な紫色を快感で潤ませてしまおうか。
「っ…ネズミってば!」
ああ…そんな甘い体温で惑わすな。
もういっそのこと押し倒して甘い体温を艶やかに変えてしまおうか。
「…紫苑。」
ああ…もういっそのことこのぬるま湯のように心地好い、しかし生き地獄のような関係に終止符を打ってしまおうか。
「ね…ずっ!?」
ああ…ほら簡単。
甘い甘い唇に触れてしまえばもう止まらない。
「ふっ…んっ…ねず…みっ!」
「っ…好きだ。」
「はぁっ……えっ…?」
「好きだ。紫苑。」
するりと滑り落ちた言葉。
言ってしまうとなんだかモヤモヤしていた心が嘘のようだ。
「ぼ、僕…も…」
頬を真っ赤に染める紫苑。
恥ずかしそうにしながらも真っ直ぐと目を逸らさずに放たれた言葉。
「アンタ…意味わかってんのか?ライクじゃないんだぜ?紫苑に触りたいし、キスもしたい。セックスだってしたい。」
「せっ!?……わ、わかってるよ!僕だってネズミに触れたいし、ち、ちゅうだって…せっ…せ…そ、それはよくわからないけど…ネズミとなら大丈夫だよ?ネズミが好きなんだ。大好きなんだ…」
ぶわっとますます顔を朱に染め、瞳を伏せる。
白く長い睫毛が羞恥心からか震え、綺麗だった。