リク文
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「…ん…。」
目を開けると、真っ白な天井…嗅ぎ慣れた薬品の独特な臭い…。
「四番隊か…。」
誰が運んでくれたか知らないが、お礼を言わなきゃ…。
もそもそと起き上がり、窓から外を眺めた。
「…っ!!」
松本さんと隊長が変わらず楽しそうに話していた。
「…たい、ちょ…。」
この3日、僕は十番隊にも足を運んで、松本さんに『いないわよ』って返事を貰って…。
あれは嘘だったのだろうか…。僕を騙して二人で仲良く逢い引きしていたんだろうか…。
そんな筈は無い!分かっていても疑問の芽は次々と生え出す。
僕は貴方の何ですか…?隊長…。
『イヅル大好きやなぁ、ボク。最近アカンわぁ〜。』
いつもの飄々とした態度で言うから…冗談だと思って…でも嬉しくて…。隊長から隠れるように俯いて微笑んだ。
つい、一週間前の事じゃないか…。いつもの事とは言え、そうやって言葉にしてくれていたのに…どうして…?
『なぁ、イヅルはボクをどう思ってるん?』
その後も優しく聞いてくれたから…。
『ぼ、僕は…隊長に従います。僕の忠誠は隊長にだけ捧げています。』
…何がいけなかった?
『そうか、おおきに。』
って微笑んでくれたじゃないか…。
隊長と体の関係を結んでどれ位経つだろう…。言葉こそ無かったけど、せめて隊長に近しい者になったつもりでいたのに…。
ギリ、手の中の布団が嫌な悲鳴を上げた。無意識に強く引っ張っていたらしい。
「あぁ…。」
相変わらず二人は何がおかしいのか、カラカラと笑っている。
見たくない…。隊長が僕以外に微笑む…隊長が僕以外に何かを囁いている…。
そんなに近づいて…。
「…っく…。」
不覚にも視界がボヤけてきた。止まれ!と念じても一回溢れ出した涙は止まらない。
パタパタと握り締めた拳に雫が落ちる。
「たい、ちょう…。」
いつもなら、気弱になった僕を本当にタイミング良く見つけて頭を撫でてくれていたのに…。
足が震えていたら優しく背中を叩いてくれていたのに…。
今、貴方の目には…松本さんしか映っていないんですね…。
「ふっ…は…。」
少しでも隊長に好かれている、なんて感じて安心していた自分に嫌気がさす。
このザマは何だ。僕は唯の性欲処理の道具だったのか?
あの優しい微笑みも、言葉も、まるで愛しい物に触れるみたいに抱き締めてくれたあの腕さえも!
「全部が…嘘か…。」
ダンッ!!!!
力一杯壁に拳を叩き付けた。悔しいのか、悲しいのかよく分からない。込み上げる嗚咽と一緒に吐き気がする。
「もう、いい…。」
もう聞きたくない、考えたくない、見たくない、感じたくない…。
「侘助…。」
刀の名を呼ぶ。あの景色を見ないで済む方法は二つ…。
彼等を消すか、僕が消えるか…。
ふらつく足に力を入れ、ゆっくりと立ち上がる。
「行くよ、侘助…。」