草書
□開眼大作戦
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「じゃじゃ〜ん!吉良ぁ!あんたがやるのは至極簡単!」
…皆凄まじく黒い笑顔だよ…?ホントに簡単なのかなぁ…?
「吉良くん、市丸隊長に今まで言った事の無い暴言か褒め言葉をかけて」
雛森くんのキラキラと輝く笑顔がこんなに嫌になるなんて…。
「なんで、ですか?」
「だあってぇ、あたしは大概ギンに悪態ついてきたし、暴言はうちの隊長吐きまくりでしょ?」
後ろで日番谷隊長が頷く。
「俺に到っては奴が名前を覚えているか怪しい!こんなのが話しかけてみろ!瞬殺だぜ?」
「あたしは怖いから。」
「あ、あたしも!」
「……………。」
み、皆…僕だって怖いんだけど…。
「じゃ、台詞は自分で考えて!んで…今日の終業と共に全員三番隊に集合!いいわね〜!」
お〜!と全員が言い逃げ状態で解散した。
ぐりっと振り向き、日番谷隊長を探すが彼までいなくなっていた…。
ここ、十番隊舎なのに…。
「も、行こう。」
ズーンと肩を落とし、三番隊に帰る。隊長に…言う言葉…?普段何て言ってるっけ?
…『仕事して下さい』『何処行ってたんですか?』
…毎日言ってる台詞はこの二つが断然多いな。…情けない。
…僕は『イヅルがおってくれてホンマに助かるわぁ、ボク、イヅルおらんかったらダメや。』って毎日言われてるけど…これ、騙されてる?逃げる為に隊長毎日言ってたのかなぁ…?
あ、だんだん腹立ってきたぞ。僕は毎日毎日隊長の為に頑張って来たのに!隊長のあの言葉に喜んで仕事してきたけど…。もし!本気での感謝の言葉じゃないんなら…。
…え〜と…どうしようかな…?
副官は辞めたく無いし、三番隊も好きだ。隊長の事も好きだし、むしろ隊長の為に何かしたい…。
「ああぁ!それじゃダメなんだってば。」
「何がダメな〜ん?イヅル。」
…相変わらず甘い声で話掛けますね、隊長…。
「隊長!隊長は僕の事を何だと思って…らっしゃる…ん、ですかぁ…?」
語尾が弱くなったけどちゃんと聞けたぞ!
「…は…?副官やろ…?…あぁ!ボクの大っ好きな副官や!」
はぁ…ニコニコと答えて下さるのは嬉しいのですが…。
…僕的には『頼りになる』とか『しっかり者』とか…誉めて下さると嬉しかったんですが…。
「なんや?不満かぁ?」
困ったような顔をして僕を覗き込む。
…この顔に弱いんだよなぁ…。
「いえ…ちょっと自分の存在意義を考えてまして…。」
「あら〜、イヅルはボクの為に生きとったらええや〜ん。」
…え?え?え?!
何ですかぁ!それは!
「隊長?それは彼女にでも言ったらどうですか…?僕男ですが。」
「うん。イヅルはどう見ても男やん。でも、本気でそう思うんやもん。」
「いやいや、隊長…。そんな事言わなくても僕ちゃんと隊長の為に頑張りますから。」
…そうか?と小首を傾げ、
「でも、本気やったらどうする?」
…た、隊長…この気配…開眼ですか?今はダメです!後で!僕の馬鹿!あぁ…後で聞くんだった!あぁあ…どうすれば…
「隊長!この話はゆっくり終業後に如何ですかぁ?!」
声が裏返っちゃったよ!頼みます!隊長!うんと言って下さい!
「…イヅルがそう言うんやったらええけど…。何かあるんか?」
ぶんぶんぶん!勢いよく首を横に振ると、ほな行くな〜と隊長の姿は消えた。
「あ…、脱走容認しちゃったよ…。」