暗澹を極めた闇が深まれば又、辷らかな色に見えない振りをする。僕を蝕む知らない感情に気付くのは遅くなかったが、認める事は未だ不可ない。
何かが、壊れて仕舞う気がして。

光の様に白く伸びるも力強い手に搦め捕られて、風切羽を折られた。"飾り"と言う屈辱。
皇帝の高圧的な態度に嫌悪を覚える。けれど強引ささえ心地好いと思う、冷たく刺す棘に縛られて尚も赤く色付くなら構わないと思う僕が居る。

「――逃げられない、か」

「逃げられない? 可笑しな事を言うのだな。望んで来たのは、貴様の方ではないか」

「望んで……? 何を言っているんだ。拘束して、嬲って愉しんでるのは其方だ」

 抵抗も敢え無く、呼吸と髪と気持ちが乱れるだけ。
情けなさに涙が零れそうだ。こんな筈じゃない、ならば何を求めているのか……?そんな事は知りたくない。
確かに"自分"から逃げて来たのかも知れない。

「脆いな、まるで硝子細工だ。其の様に虚ろでは、直ぐに罅が入る……」

 ――心が、満たされないのだろう?
然う囁かれ首筋を這う冷たさに身震いする。乱暴に唇を奪われ、舌で犯され、歪んだ愛を注がれる。
もし其の愛情で窒息死して了えるなら、どんなに良かったか。

もう僕は、気付いて仕舞った。























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