観月、君がもし、この手を掴んで呉れないなら、僕はヴェルヴェットの深い闇に墜ちて逝くだろう。涙は星と成って輝き、身体は糸の様に解けて吹き抜ける風と成るだろう。

其の時、君は何を見ている?

 天使の喇叭を聞いたら、君は、君じゃ無くなる。余計なものは全て捨て去って仕舞えば良いさ。必要なら僕が与えるから。
来る夕べにパッシフローラが時を報せる。遅れてはいけない。もしも間に合わなかったら最後、翼は腐敗し脚は根を張り叫びは二度と届かない。だから、遅れてはいけない。

 君は定時に来た。僕は気付くべきだった。君は愛してくれていた。僕は救いたかった。
違えた視線の先に有るのは?
何も。

 振り返れば娜かな黒。
力強い銀色がゆっくりと肋骨を潜り、脈打つ血液に触れる。何と幸福な事だろう。
今騒音の刹那に因って、観月はじめと不二周助は一つの温度を共有するのだ。





















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