本@
□誤解
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花束を抱え嬉しそうに歩いているハナは、見るからに幸せそうだ。
約束をしているタカコの家に足取りも軽やかに向かっている。
ハナが来るのを知っているので、玄関の鍵はかかっていなかった。
タカコを驚かそうと悪戯っ子のように足音を忍ばせ部屋に入った。
その時からハナの時間が凍ってしまった。
抱えていた花束が雨のように床に広がり落ちた。
タカコと雪組の下級生が抱き合いキスしていた。
『私は何を見ているの?』
そう思った瞬間、ハナは踵を返し部屋を飛び出していた。
『後ろで誰かが私の名前を呼んでいる…誰?』
「ハナ!」
「和央さん。どうしましょう?」
「君は心配しなくていいよ。大丈夫だから。」
下級生を帰すとハナの携帯に連絡を入れる。
でも、でない。
メールを入れる。
返事が来ない。
すぐさまハナの家に車で向かうが帰ってきていない。
夜中まで待っていたが帰ってこなかった。
タカコは自分の家にハナが戻ってるかと思ったが彼女の姿は何処にもなかった。
待っていたのは床の花達だけだった。
床に落ちている花を花瓶に挿していると、嬉しそうに一本一本選んでいるハナの様子が目に浮かんでくる。
「フ〜…」深いため息がもれる。
『まっ 明日からは稽古だし必ずハナに会える。大丈夫。大丈夫。」と自分を落ち着かせた。
『ハナに会って話せば問題はない筈だ』