変わり種
□◆君の傍で◆
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「……ったく、おっせぇな。」
オレがバイトの合間にカフェで待ち合わせているのは秋彦だ。
大財閥の息子だが、家が近いこともあり幼いころからよく二人で遊んだ仲だった。
その秋彦は、大学生ながら既に作家デビューを果たし、連載を何本も抱えるまでになっている。
小さな時から書くことが好きで、新しい小説が書きあがると真っ先にオレに読ませてくれていた。
それは今でも変わらない。
………そして、いつしか秋彦に抱いていた淡い恋心も叶わぬと知った時、オレは親友としての道を選んだ。
…気持ちの整理はついているはずなのに
……ぽっかりと空いた心の隙間を埋めることが出来ずにいた…。
そんな折…久しぶりに「お前に頼みたいことがある。」と電話が来た時は、少々焦った。
なぜなら、卒論とバイトで忙しくなった分…以前のようには会えなくなってしまったから、嬉しいと思う気持ちと同じくらいに不安もあったからだ。
「弘樹。」
聞き慣れた秋彦の声に、小さく高鳴る鼓動を抑えつつ振り返えると、
「元気だったか?」
オレを覗き込むように榛色の瞳が小さく笑う。
「まぁな。…お前こそ、ちゃんと食ってんのか?大作家先生は忙しいそうだからな。」
「勤労学生の弘樹ほどじゃないさ。」
そう言って、嫌がってみせるオレの頭を撫でる秋彦の後ろには、秋彦とそう背の変わらない男が立っていた。
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