今日からマ王!

□〇〇の憂鬱
2ページ/9ページ





たくさんの人を前にしたユーリは、更に緊張し足が震える。


「皆様、大変お待たせいたしました。我が眞魔国魔王渋谷有利陛下より、開会のご挨拶でございます。」

…い…いきなりかよっ!?

深呼吸くらいさせてほしい…。


笑顔を貼り付けたユーリは、視線をあげて会場を見渡すと、遠くにコンラッドの姿が見えた。


……あ…コンラッドだ。

不思議と心が落ち着いて来たユーリは、胸いっぱいに空気を吸い込むと、

「眞魔国同盟の皆様、遠路遙々(はるばる)来てくれてありがとう。こうして皆さんが顔を合わせる機会はあまりないと思いますので、どうぞ楽しく過ごして下さい。乾杯。」



ユーリの音頭で、それぞれの国の習わしに添った乾杯をし、パーティーが始まった。



大役を終えたユーリは、とりあえずグラスを置くと、安心したように一息ついた。



「陛下、お疲れ様でした。」

いつの間にか、ユーリに寄り添うようにして立つコンラッドが声をかけた。

「コンラッド、お疲れさま。もう終わったの?」

「……まぁ。そうですね。」

困ったようにコンラッドは笑う。

「そっか。…ねぇオレの挨拶見てた?王様としちゃ、いまいちだよね?」

ユーリは、恥ずかしそうにポリポリと頬を掻いた。

「いえ。あなたらしくて、とても良かったと思いますよ。」


「くすっ。それ褒めてくれてるの?」


「もちろんですよ。」

コンラッドは、そう言って優しく微笑む。



「…ならいいや。さて、オレも王様らしく、みんなに挨拶してくるか。」

張り切って立ち上がったユーリに、コンラッドが声をかけた。


「…陛下。俺の傍から、あまり離れないで下さいね。」


ユーリは、なぜ…そんなことを言うのかと首を傾げたが、すぐに太陽のような笑みを返すと、

「それは、オレのセリフだよ。」


そういって、皆の集まる中へと駆け出した。


「あ、陛下。勝手に動き回られては…っ!」


慌てて後ろを追いかけるコンラッドだった。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ