今日からマ王!
□〇〇の憂鬱
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たくさんの人を前にしたユーリは、更に緊張し足が震える。
「皆様、大変お待たせいたしました。我が眞魔国魔王渋谷有利陛下より、開会のご挨拶でございます。」
…い…いきなりかよっ!?
深呼吸くらいさせてほしい…。
笑顔を貼り付けたユーリは、視線をあげて会場を見渡すと、遠くにコンラッドの姿が見えた。
……あ…コンラッドだ。
不思議と心が落ち着いて来たユーリは、胸いっぱいに空気を吸い込むと、
「眞魔国同盟の皆様、遠路遙々(はるばる)来てくれてありがとう。こうして皆さんが顔を合わせる機会はあまりないと思いますので、どうぞ楽しく過ごして下さい。乾杯。」
ユーリの音頭で、それぞれの国の習わしに添った乾杯をし、パーティーが始まった。
大役を終えたユーリは、とりあえずグラスを置くと、安心したように一息ついた。
「陛下、お疲れ様でした。」
いつの間にか、ユーリに寄り添うようにして立つコンラッドが声をかけた。
「コンラッド、お疲れさま。もう終わったの?」
「……まぁ。そうですね。」
困ったようにコンラッドは笑う。
「そっか。…ねぇオレの挨拶見てた?王様としちゃ、いまいちだよね?」
ユーリは、恥ずかしそうにポリポリと頬を掻いた。
「いえ。あなたらしくて、とても良かったと思いますよ。」
「くすっ。それ褒めてくれてるの?」
「もちろんですよ。」
コンラッドは、そう言って優しく微笑む。
「…ならいいや。さて、オレも王様らしく、みんなに挨拶してくるか。」
張り切って立ち上がったユーリに、コンラッドが声をかけた。
「…陛下。俺の傍から、あまり離れないで下さいね。」
ユーリは、なぜ…そんなことを言うのかと首を傾げたが、すぐに太陽のような笑みを返すと、
「それは、オレのセリフだよ。」
そういって、皆の集まる中へと駆け出した。
「あ、陛下。勝手に動き回られては…っ!」
慌てて後ろを追いかけるコンラッドだった。
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