ロマンチカ

□星が降る夜に
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「…ウサギさん。…ここ…どこ?」


「……山。」


…いや

それはオレにもわかるよ。

美咲は、渋い表情を浮かべた。



車は、緩やかにスピードを落とし…やがて止まった。

エンジンを切った秋彦は

「………着いた。」


「へっ?」


真っ暗で何も見えないんですけど…。


「ちょっと待ってろ。」

秋彦は、徐(おもむろ)に車から降りると、美咲の方に歩み寄りドアをあける。


「美咲、目を瞑って。」

「な…なんで?」


ルームライトの薄暗い中で、美咲が訝しげに秋彦を見上げると、


「…いいから。」


秋彦が、ふわりと笑みを浮かべる。

美咲は、まぁいいか…と大人しく目を閉じた。



秋彦は、美咲を外に出すと後ろに回り込み、閉じられた瞳の上からそっと手を添える。


「……ウサギさん?」


黙ったまま、美咲の顔を上に向けると

「…目を開けていいぞ。」

秋彦に言われるがまま、ゆっくりと目蓋を上げると…


そこにあったのは、真っ暗な空に広がった輝ける星たちで…


「………すごい…すごいよ、ウサギさんっ!」


美咲は感嘆の声をあげた。


「来て良かったろ?」


「…うん。とっても綺麗だ。」


美咲は、空を見上げたまま返事をする。



「そろそろ流れ星がピークだから、いっぱい見えるはずだ…。」


秋彦は、美咲からいったん離れると車の中からブランケットを取り出し

美咲をそれにくるめて抱きしめた。



そんな秋彦の優しさに、美咲の胸はトクンと高鳴る。


「ウサギさん…///。」


「なに?」


「寒いだろ?一緒に使おうよ…。」


秋彦の肩にもブランケットを掛けると、先程のように美咲を背中から包み込んだ。



「こんなに綺麗な星空を見たの初めてだ…。ウサギさんありがとう。」


「くすっ。感謝しろよ。」


「はいはい。」


空を眺めながら軽く答えると、キラリと星が流れた。


「…あっ!?流れ星っ。ねぇ今の見た?」


「見たよ。」


「すっげえ綺麗だった。」

秋彦に体を預け興奮気味に美咲は呟く。

「そうだな。」

上を見上げる美咲の額に軽く顎をのせ秋彦は静かに微笑む。

そうこうするうちに、あちらこちらで星が流れ始め…美咲は瞬きもせずそれに見入った。







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