ロマンチカ

□ウサギとミサキとお酒
2ページ/7ページ




仁さんの話は、とても楽しくて…いつの間にか、お酒もたくさん飲んだことに気づかなかったオレは、思いのほか気持ちよく酔っていた。


「美咲君、大丈夫かい?」

心配そうに仁さんが声をかけてくれる。


「…すいません。ちょっと酔っちゃったみたいで…。」


美咲はユラユラとする視界の中で、とりあえず返事をした。




「もしもーし。ウサギちゃんですかぁ?」


………はい?


聞き慣れた名前に振り向くと、隣の酔っぱらいが美咲の携帯で話している。


「……あれ?男の声だ…。」


「…へ?。あっ…。あーっ!!オレの携帯っ!ちょっ…どこにかけたんですかーっ?!」


「え〜?どこって…アドレスから…彼女らしき、ウ・サ・ギ・ちゃーん。…と思ったら男でしたーっ。」


…よ…よりによって、

ウ…ウサギさんのとこにかけちゃったのーっ!?

…ヤバい


………ヤバい…ヤバい、ヤバいーっ。


「かっ返して下さい。」

美咲は隣の人から携帯をもぎ取り、


「もっもしもしっ。ウサギさん、ごめんっ!」


『…………。まだ飲んでるのか。』


「あ…。う、うん。」


「美咲君、どうしたの?なんか、マズいの?」




携帯を掴む美咲の傍で仁さんが声をかけると、



不機嫌そうな秋彦が、


『今から迎えに行く。』

「えっ?何言ってんだよ。来なくていいよっ!自分で帰れるしっ!」


『お前酔ってるだろ?』


「だっ、大丈夫だから。そんなに酔ってな…」


仁さんは美咲の携帯をスルリと抜き取ると、


「あの大丈夫ですよ。俺が責任持って家まで送り届けますから…って……キレてるし…。」



…あー…マズい。


…やべ

…変な汗出てきた。



「ねえ。…電話の向こうの人、美咲君がどこにいるのか分かるのかな?」


「……さぁ…どうでしょう。でも、オレ…そろそろ帰ります。」


…ウサギさんのことだから、きっと来る。絶対来る。間違いなく…来る。


小説家として世間一般に認知されているウサギさんが現れたら…

……………面倒だ。



…あ…つうか、…オレ…なんで迎えに来るって思ってんだ。


…来るわけねぇじゃん。


あの人達が離すわけないもんな。



「……美咲君?。」


「あ…はい。すみません…オレ、マジ帰ります。ご馳走様でした。」


席を立ったオレの腕を仁さんが掴んだ。


「じゃあ…俺、家まで送るよ。」


「いや…あの…1人で大丈夫ですから。」


「遠慮することないよ。それに美咲君、結構酔ってるよ。」


………確かに、自分でも足にきてるような気がするけど。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ