ロマンチカ
□ウサギとミサキと山。
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車の鍵を掴んだ秋彦に、
「散歩行くのに車で行ったら意味ねぇだろ。…歩けよ。」
「空気のおいしいとこ行きたい。山に行こう。」
「……山…?」
…なんで…山…?
「あっちに行ってから、いくらでも歩くさ…。」
秋彦は、山に行ったら確実に風景から浮いてしまうであろう真紅のスポーツカーに美咲を押し込めると、有無も言わさずアクセルを踏んだ。
………オレ
…散歩行こうと思っただけなのに…。
何でこうなるんだーっ!
…………山に行くにあたり、オレは一応ミネラルウォーターや、その他諸々…思いついたものを掴んでは来たものの…
どこを走っているのか、さっぱりわからない。
「あの…ウサギさん。どこ行くの?」
「…山。」
…だから…どこの山だっつってんだよっ!
「散歩出来る山なんだろうな…?…ってか、この車で行けるの?」
「ああ…行けるよ。私有地だから、ある程度手入れしているし…」
「…私有地…?。まさか、ウサギさんの?」
「うん。そう。」
……この人は金銭感覚も…買い物感覚も、絶対ズレまくってるから…
「タバコ買いに行ってくる。」と、出かけて行った帰りに、「あっ、ついでに山買って行こ。」…って感じで買いそうだよね。
「へ…へえ。いつ買ったの?」
「…ああ。この間、タバコを買いに行ったついでに。」
…まんまじゃねぇかっ!
「あのねっ、ウサギさ……」
「着いた。」
「えっ、着いた?。……うわっ、すげー!」
視界に広がるのは、緑あふれる山並みと、遠くに見える近代的な街並み…
「いいところだろ?」
「うん。すごいよっウサギさん。ありがとう。」
車を降りて、はしゃぐ美咲に、
「あまり遠くに行くなよ。迷子になるぞ。」
「うっせぇ!こんな、だだっ広いところで迷子になりようねーだろ。」
振り返った美咲は、ぷぅっと頬を膨らませた。
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