ロマンチカ
□ウサギとミサキとミズキ
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「…はぁ。」
朝食の後片付けをしていたオレがキッチンに立つと、
「高橋君、料理上手だね。みんな美味しかった。ね?…秋彦兄さん。」
「…そうだな。」
俯き加減に柔らかく秋彦は微笑んだ。
「あ…ありがとう///。」
……人間…褒められると嬉しいものだ。
「秋彦兄さん、昔はあまり朝食って食べなかったよね?」
「そうだな…。食べるって事にあまり関心がなかったからな。」
……オレの知らないウサギさんを水樹さんは……知ってる。
「あっそうだ、今回写真持って来たんだ。あっちにいた時のやつ。…でね、秋彦兄さんに見て欲しいのがあるんだ。」
水樹は、荷物の中から小さなアルバムを取り出し広げると秋彦に見せた。
「…ふーん。」
と、頬杖をついたまま、興味なさそうにアルバムを見た秋彦だったが、
「……あれっ?この子は…隣に住んでた…?」
「そうだよ。大きくなったでしょう?秋彦兄さんがいた頃は、こんなだったのに…。」
「…へぇ…大きくなったな。こいつも本が好きでよく借りに来てた。懐かしいな。」
「だろ?」
秋彦があちこちページをめくる横で、水樹は視線だけ美咲に向け、口の端で笑う。
水樹と視線がぶつかった美咲は、
………水樹さん…わざとじゃないと思うんだけど…。
…どうして、オレの不安で揺れる気持ちを
……さらに揺さぶるんだろう。
美咲は、動揺が指先に伝わってしまったのか、茶碗をすべり落としてしまった。
ガチャン!割れた音がキッチンに響き、慌てて美咲は茶碗の欠片を拾い始めた。
「うわっ!…ご…ごめんっ!」
「美咲っ。大丈夫かっ!?ケガしなかったか?」
びっくりした秋彦が駆け寄り、美咲の手を確かめるように握りあげた。
「ウ…ウサギさん、大丈夫だよ。それよりごめんっ。茶碗割っちゃって…」
「…気にするな。」
ケガがなかった事に安心した秋彦は、わしゃわしゃと美咲の頭を撫でた。
「ちょっ…ウサギさんやめろよっ…ぐちゃぐちゃにすんなっ…///。」
悪態をつきながらも、久しぶりに髪の毛をかき回されたこと嬉しく感じる美咲だった。
髪を手ぐしで直していると、
「高橋君、大丈夫かい?俺が急に来ちゃったからかな?。…ごめんね。忙しくさせちゃったね。」
「いえ、全然そんな事ないです。ドジっただけなんで…。」
「…なら…いいんだけどね。くすっ…高橋君、動揺丸出しだよ?」
オレだけに聞こえるように…そしてせせら笑うように…水樹さんは小声で言った。
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