エゴイストU
□ささやかな主張
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……大人げない
………そんなの…わかってる。
…けど、ああもベタベタされると
…腹に据えかねるというか…。
まぁ、オレと野分が付き合っている年月は長い。
でも、一緒にいた時間でいえば…
……オレは…圧倒的に不利だ。
………それを、
「俺、野分とこんなに親しいです。」的に見せつけられると
…否が応でも、野分とあの先輩の付き合いが、すげぇ長いんだなって認めざるを得ない。
……い…いや、別に…だからって、あの先輩と野分の間を疑うわけじゃない。
ただ、事…野分に関しては心が狭い…つうか…。
…オレだって、それなりにベタベタしたい…。
自分でも呆れる程…くだらない小さな嫉妬だ。
…こんな気持ちになるなら、直接カバン渡そうなんてしなきゃ良かったな。
「………はぁ…。」
深い溜め息をついて立ち止まった弘樹は、やおら携帯を開いた。
「…あるわけないか。」
あまり話せなかったから、野分からのメールとか…ちょっと期待してたのに…
こういうって結構ヘコむ…。
…が、…オレからメールするってのも癪に障るし…。
パクンと音を立てて閉じた携帯をポケットにねじ込んで歩き出した弘樹は、また一人ぼっちで過ごすであろうマンションに重い足取りで歩き出した。
道すがらクリーニング店の前で
ふと立ち止まった弘樹は、野分が衣類保管サービスを利用していた事を思い出す。
これは、クリーニングした後、温度や湿度が一定に保たれた保管倉庫で一定期間預かってくれるサービスで、クローゼット代わりに利用する人が多いのだが…。
去年、野分に買ってやったボリュームネックのポンチブルゾン…。
物持ちの良いアイツは「長く着るんだ」とか言って、このサービスを利用していた。
このところ、秋とは思えない暖かな日が続いたけど、最近は急に寒くなって来たし…
「…しょーがない。取って帰ってやるか。」
弘樹は、スタスタとクリーニング店に足を踏み入れた。
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