エゴイストU

□+潜在+
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「上條先生〜。」

ゼミの後、数名の学生に呼び止められ弘樹は立ち止まった。


「……どうした?」

講義の後、弘樹が熱心に質問してくる学生達に囲まれるのは日常的な光景で…

弘樹もまた、そんな学生達に対して自分の持つ知識を惜しげもなく提供していた。


まぁ、学生の中には弘樹目当て…という不届きな輩も含まれてはいるが…。


一通り終わると、その中でも特に熱心に勉学に励む須藤が、質問の後にポンと手を叩き口を開く。

「上條先生、この後なにか予定ありますか?」


「…ああ。今日は夕方に予定があるから、帰るが…。」

今夜は野分が帰って来る日だ。

まめな野分は、カレンダーに夜勤のない日を赤い丸でしるしを付けていた。

……それは直前の変更が多く、5回に4回は帰って来ないから全く役に立たないのだが、

一応目安にはなるので、丸のついている日は早めに帰宅している弘樹だった。

「…僕の友達なんですが、ちょっと面白いヤツなんで先生にも紹介したくて…。30分くらい、お時間ありませんか?」

「そうか。でもなぁ…」

野分が帰宅する前に買い物を済ませたい弘樹は、腕時計を見ながら断る理由を考えていた。



「そいつ、最近ある事に凝ってまして…。」

そう言って意味深な笑みを浮かべるが、

弘樹は、そんなことどうでも良い事で

「悪いが…」

速攻断ろうとすると、


「さぁ、行きましょうっ。」

逃がさないとばかりに、男子学生にがっちり両脇を抱えられてしまった。


「ちょっ…!?」


「いいから、いいから、ちょっとだけ付き合って下さいよー。」


「マジで用事が…って、おいっ!」

弘樹は抵抗虚しく、2つ隣の心理学ゼミ教室へと引きずられて行くのだった。




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