ロマンチカU

□sweet candy〜秋彦の場合〜
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“ もらってくれ。 ”


「なんだ…これは…。」


煙草を買いに出ていた秋彦は、玄関先に置かれていた荷物の上にあった手紙に首を捻った。

とはいえ、幼なじみから届いたものだとわかる筆跡に、箱の中身に視線を移すが、ほとんど飴の類いに興味がない秋彦は、びっしりと詰めこんであるcandyと書かれた袋にげんなりする。


「まったく…人に物を贈ってよこすにも限度というものがあるだろうに…。」


しようがないヤツだ…と、ポケットに手紙だけしまいこみ、ため息をつきながら段ボールを閉じてソファの横へ置くと、締切を明日にひかえた原稿を仕上げるため2階へとあがっていってしまった。





しばらくすると、丸川のバイトを終えた美咲が、秋彦のファンから山ほど届いたプレゼントが入った箱を抱えて帰って来た。


「ただいまー。」


2階を見上げながら美咲が箱を置くと、

「お帰り。」


眼鏡をかけた秋彦が顔を出す。


「良かった、仕事してたんだね。相川さん、ちゃんと書いてるかって心配してたよ。」


そう言いながら、美咲は肩から提げていたバッグをソファに置いた。

「締切は明日だし、原稿は順調に進んでいる。心配は無用だ。」


よほど余裕があるのか涼しい顔で答える秋彦に、


「そんなこと言って、いっつも相川さんの期待を裏切るのは誰だよ。」

美咲は眉を顰めた。


「くすっ、出来た作品で裏切ったことはないだろ?」


不敵な笑みを浮かべる秋彦は、確かに天才と称えられるだけの作品を世に送り出している。

だからこそ、こうしてファンの心を捉えて離さないのに、



「あ、ウサギさん…これ。ファンの皆さんからのプレゼント。相川さんから預かって来た。」


段ボールのフタを開いて豪華に飾られたプレゼントを見せるが、

「今日の夕飯、なに?」


まったく興味がないようだ。


「へっ!?…あっ…と、昨日もらったホタテがあるからソテーにでもしようかと…。」


「そうか、楽しみにしてる。夕飯が出来たら呼んでくれ。早めに済ませて残りの仕事を片付けてしまいたい。」


「あ、うん。わかった。頑張ってね。」

そう言った美咲に優しく微笑みかけた秋彦は仕事場のドアを閉める。



「…さてと、ウサギさんが珍しくやる気になってるし、さっさと夕飯作っちゃお…って……ん?」


ソファの横に置かれた段ボールに気づきフタを開けると、


「………なんだこれ?」


隙間なく詰めこんである飴の袋に、


「………ファンの人から…かな…?」



あり得ない…と、驚愕しながらも、candyという他には見慣れない袋の文字に首を捻る美咲だった。





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