エゴイストV

□溺れる唇
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家に着いて、弘樹を真っ先にベッドへ横たえる。

穏やかな寝息をたてる寝顔を見ながら、瞼にかかる髪をよけた野分は、
小さく溜め息をついた。

どうしちゃったんだろ、こんなに酔うなんて・・・。

まぁ、それは明日聞くことにして、とりあえず着替えさせないと・・・。

脱衣所で、パジャマと体を拭くタオルを準備すると、リビングのテーブ
ルの上に置かれた小さな黒いボトルが目に入った。


手に取って見てみると、それは飲みかけの外国のビールらしい。

更に裏を見るとアルコール度数と思われる数値は67.5%・・・。

度数の高っ!寝不足でこれを飲んだとしたら・・・
と、なんとなく察しがついた。

っていうか、そんなにお酒強い方じゃないのに、これを全部飲んでたら
ホントに大変なことになってた。

飲み残してくれて良かったと、今度は安堵のため息をつく野分だった。




部屋に戻ると、野分は手早くボタンを外すと服を器用に脱がせていく。

丁寧に体を拭いていると、身じろぎしてわずかに体を竦めた後、

「・・・んー・・・」

伸びをするように声を上げた弘樹は、薄く目を開いた。

「ヒロさん、起きたんですか?」

「・・・あれぇ・・・野分?帰ってたのか・・・おかえり」

微笑を浮かべ微睡(まどろ)む。

舌ったらずで、だるそうに話す弘樹の瞳は、酒が抜けきっていないから
か少し潤んでいる。

か・・・可愛すぎるっ!

そう心の中で叫んだ野分だったが

「・・・あ、はい。ただいまです。」

まずは弘樹の着替えをさせなければと努めて平静を装った。

「・・・なに・・・やってんだ?」

いつもなら、この状況に照れて大騒ぎしそうなのだが、静かな口調で薄
く笑みを浮かべる弘樹は、妖美な色気を醸し出している。

「えっ?い、いえ、ヒロさんを着替えさせようと・・・。」

「・・・なんで?」

「なんで・・・って、覚えてない・・・ん・・・」

覗き込む野分が言い終える前に、弘樹の細い腕がスルスルと首に絡みつ
き頭を引き寄せると、軽く触れるだけのキスをした。

「なんだ・・・やるんじゃねぇの?・・・ん、・・・あーこれも邪魔だな・・・」



ふくらはぎに残っていた下着もジーンズも煩わしいとばかり、ぞんざい
に足で払ってベッドの下に落とし、今度こそ四肢を存分に伸ばした弘樹
は、布団の上にすらりとした足を投げ出し、野分に視線を向けると挑発
的な笑みを浮かべる。

・・・正直、こんなに色っぽく、こんな風に誘われたら・・・。

元より溢れてくる欲情を理性だけで塞き止めていたのだから、そんなも
の崩れ始めたらあっという間に木っ端みじんである。

弘樹に唇を重ねて、そこからは昂った自分の感情のまま舌を絡めて口の
中を掻きまわす。

「・・・っふ・・・ぁっ・・・っ」

時々こぼれる弘樹の甘い吐息も、口の中に残るアルコールの香りも全て
拾い集めていたが、ほんの少し離れた唇から

「くすっ・・・お前・・・がっつき過ぎ・・・。」

凄まじいほど妖艶な笑みに見蕩れてしまった野分の動きが止まる。

熱を帯びた弘樹の手のひらが、野分の頬を滑ると今度はシャツのボタン
を外し始めた。

ハッと我に返った野分は、

「自分で脱ぎますから・・・」

そう言って、体を起こすと、何で今日に限ってシャツなんか着てたんだ
俺はっ!と、もどかしそうにボタンを外していると、今度は弘樹の手が
下衣に伸びていく。

微笑を浮かべたままの弘樹は、視線を下げると野分の形をなぞるように
触れてきた。

「ちょっ・・・/// ヒ、ヒロさ・・・」

「・・・すっげぇ元気だな。」

「ど、どこ見て言ってるんですかっ///」

大抵、こういうのは野分のリードで事が進むのだが、今回は何か違う。




(つづく)
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