エゴイストV
□青天白日
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あいつは、オレに別れを告げるのだろうか。
それも近いうちに・・・。
だって、そうだろ。あいつの性格からして誰かと結婚するのに、オレとそのまま付き合うとか、そんな奴じゃない。
でも、その時オレは・・・どうする?
あっさり別れる?
それとも、みっともなく縋り付いて泣いてみる?
そんなこと出来るわけねーだろ、このオレに。
いや、そもそも野分は、二股するような酷いヤツだったか?
「あの、・・・上條先生?真っ青な顔してますけど、大丈夫ですか?」
学生の声に、ハッとして弘樹が顔を上げる。
「えっ、あ、あぁ大丈夫。すまない、次のページ開いて・・・」
講義中だぞ、しっかりしろよオレっ。
悶々としながらも、なんとか講義を終えた弘樹がトボトボと廊下を歩いていた。
あいつは、いつも真っすぐにオレを見てる。
好きだって気持ちも、しつこいくらいに伝えてくれる。
それは、今も現在進行形だと思ってる。
・・・いや、オレがそう思いたいだけなのかも。
「・・・はぁ」
小さなため息をつくとポケットの携帯が着信を伝えてきた。
画面を見て顔が強張るが、一瞬迷ってタップした。
「もしもし、ヒロさん?俺です、今日定時で上がれそうなんで、夕飯の食材買って帰ろうかと
思うんですけど、食べたいものありますか?」
・・・いつもと同じ・・・野分の優しい声。
「いや、ないよ。」
「じゃあ、今夜は寒いし、鍋にしましょうか。」
「っていうか、お前にそんな時間あるのか?」
「はい、もちろんです。夕べ一緒に食べられなかったので、準備して待ってます。」
「・・・いや、オレ今日は遅いから先に食べていいぞ。どうせまた、病院行くとか、
・・・だ・・・誰かに呼ばれることになるんじゃねーの?」
昨日見た幸せそうに笑う二人が頭にチラついて、ついイライラしてしまう。
「いえ、大丈夫です。明日は休みとってるんですよ。」
「くすっ。・・・へぇ。」
弘樹は、俯き薄く笑みを浮かべた。
「・・・ヒロさん?」
また、あの女と打ち合わせかよ。
「なんでもねぇよっ。」
弘樹は、そう言って携帯を切った。
「えっ、ちょっ・・・ヒロさっ!?・・・うそ・・・切れた。」
野分は、携帯の画面を見ながら茫然とする。
どうしたんだろう。夕べも、すぐに部屋に籠っちゃって出てきてくれなかったし。
気のせいかな・・・機嫌が悪いっていうか、怒ってる。
・・・俺、ヒロさんを怒らせるようなこと、なんかしたっけ?
「明日は、ホワイトデーなのに・・・」
野分は、白衣をロッカーに入れ、代わりに小さな箱が入った袋を取り出すと扉を閉じた。
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