エゴイストV

□呪縛
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付き合いが長くなると、隣に野分がいる事が自然になり、あらゆることに油断が生じることは否めないとは思っていた。



デートの帰りにキスをする・・・。


大概、あいつが突然してくるから防ぎようもないのだが、それも「またか・・・。」という程度で怒る気にもならない。




でも、あの日の夜は違っていた。



いつものように不意打ちの口付けの後、抱きしめてくる野分の腕を解くこともなく戸惑いながらも身体を預けている時だった。



「・・・・・・っ!?」



不意に…誰かに見られているような気がして、反射的に野分を突き飛ばしてしまう。



「・・・ヒロさん?」



「なっ、なんでもないっ。つか、公道でそういうことすんなって、いつも言ってんだろっ///」



悪びれた様子もなくいつものように「すみません。」と謝る野分に説教をしながら先ほどの視線を探しても、こう暗くては何も見えない。


でも、見えないということは、オレ達の姿だって見えないはずだ。



・・・そう、きっと気のせいだ。・・・と自分に言い聞かせた。




「すみません、家まで我慢できなくて・・・。」



もう一度謝って肩を竦める野分の横を、怒ったふりをして足早にすり抜けると、大きな背中を丸めた野分が後に続いた。






・・・数日後



「・・・・・・・・・なんだ・・・これ・・・。」



マンションの郵便受けに入っていたのは、切手のない大きめの茶封筒には写真が数枚あった。


その中には暗がりの中でオレ達が抱き合う写真と、ご丁寧に野分とオレの顏が判別出来るものまである。
写っている風景や服装は、あの日のものに間違いない。


宛名のない封筒がマンションのポストに入っているということは、部屋もバレているということだ。


一緒に同封されていた紙には


“上條さん、会える日を楽しみにしています。”


と、ご丁寧に新聞や雑誌から切り抜き大小の文字を組み合わせた短い内容は、弘樹の背筋を寒くするには十分過ぎた。





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