エゴイストV

□+sweet candy+
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「……………。」


大学から帰宅した弘樹は、再び教授から押し付けられた飴の袋と対峙していた。


以前もらった飴は…あまりの不味さに悶絶した記憶しかない。


例の彼からお土産だと渡されたそうだが、毎日毎日「味はどうだ?」と尋ねてくるので怖くて味見も出来ないらしい。


彼の手作りなら、どんなものでも口にするのだろうが…お土産となると知人にあげてしまったりと、結構アバウトに処分する………特に飴は…。






「………なんで、他人に配る前にオレに毒味させようとするんだ…。」



………犠牲者を最小限にするためか?



いや…でも、ミルク味をイメージしたパッケージは極一般的し…海外土産だから商品名が日本語じゃないってことくらいで、今回のは真面(まとも)…に見えなくもない。



まぁ、一個食ってマズけりゃ捨てれば良いことだ…と、弘樹は袋の中から飴を取り出した。


クリーム色のソフトキャンディをしげしげと見つめた弘樹が、覚悟を決め口に放り込むと、



「………あ…意外と普通…。」


舌の上で転がすと、仄かな甘味が口の中に広がる。


この手の飴は甘過ぎるのが常で、1つ食べると大概イヤになってしまう弘樹だったが、これは何個でもいけそうだ。



奥歯でギュッと噛み締めると、中から苦味のあるトロリとしたものが出てくる…。


「…………!?」


味的には…酒っぽい…か?



……でも…不味くはない…というより、後を引くというか…欲しくなる味だ。




そんなことを思いながら、もう1つ口に放り込むと、玄関の方からドアが開く音がする。



「ヒロさん、ただいまです。」



足早にリビングに顔を出したのは、鼻の先を赤くした野分で…。


「お帰り。外寒かったろ?」



「はい。やっぱり冬ですね…。雪は降らないですけど今夜は冷えそうです。」



そう言いながら、久しぶりに会った最愛の恋人を抱きしめた。


「…かっ…帰って早々引っ付くなっ///…風呂沸いてるから先に入ってこいよ…。」

もしかしたら帰って来るかも…と、毎日部屋を暖めている弘樹だが…体の芯まで冷えている野分には風呂で温まった方が手っ取り早い。



「ありがとうございます。でも……」



そう言った野分の指が、弘樹のアゴをすくうと

ちゅっ…と、小さく音をたてて口づけた。






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