今日からマ王!

□+その唇に+
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+その唇に+




…世間は、

恋人達が寄り添い…キラキラとイルミネーションが輝くクリスマス一色なのに、ユーリは1人浮かない顔していた。

「…陛下…拗ねないで下さい。」


「…………陛下って呼ぶなよ名付け親…。」


そう言って、公園の噴水の前で膨れっ面を披露する最愛の人は、こんな時でもツッコミを忘れない。


それを苦笑いするのは異世界から来たユーリの恋人ウェラー卿コンラートだ。


「…ユーリ…そんな顔をしないで下さい。可愛い貴方が台無しですよ。」


「だって、久しぶりにコンラッドに会えたのに、もう帰っちゃうなんてさ……。眞王ったらヒドいよ。」


「くすっ。そうですね…。」


「…寂しい。」と俯くユーリを、思いっきり抱きしめたい衝動をありったけの理性を総動員してコンラッドは踏みとどまる。

…ここは地球で…オマケに公園に彩られたイルミネーションを見に来ている恋人達に囲まれている。

さすがに、それはユーリを困らせてしまう事になるから…。


…愛しい恋人に口づけを


今は…そんな小さな願いすら、サンタクロースでも叶えてあげられそうにない。


後ろ髪を引かれる思いで噴水に近づくコンラッドに、


「…コンラッド、待って…。」






振り返ったコンラッドが見たものは、青いイルミネーションに紛れて一瞬だけ光を放ったユーリの姿だった。



…はらり…と、天空から舞い降りたのは、純白の雪…。


天気予報の降水確率0%のイブの夜に舞う雪を、そこにいた全ての人が仰ぎ見る。



その期を逃さず、コンラッドの背中に腕を回し抱きしめたユーリは、

「……コンラッド…大好きだよ。」


「…ユーリ、駄目でしょう…こんな所で魔力を使ってしまうなんて…。」


窘(たしな)めるコンラッドの声音は、とても嬉しそうだ。



「…ははっ。怒んないでよ…。」

「誰が怒るものですか。あちらへ戻る前の俺に口づけのチャンスをくれたのでしょう……?」


そう言って、銀の光彩を細めたコンラッドは、ユーリに唇を重ねて…そっと抱きしめる。


「俺は眞魔国で待っています…。早く戻って来て下さい。俺の愛しいユーリ陛下…」


コンラッドは小さく笑い…噴水の水面に消えて行った。


「……陛下…って言うなよ。」



ユーリは、揺れる水面にそう呟いて…舞い散る雪を見上げたのだった。


(おわり)



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