今日からマ王!

□○○と化学反応
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コンコン


良く晴れた日の昼下がり…

眞魔国の魔王陛下渋谷有利の居室の扉を叩くのは…



「陛下、お部屋にいらっしゃいますか?。ギュンターでございます。只今戻って参りました。」


ここ数日、クライスト領に行っていたギュンターが城へ戻って来た。


「ギュンター?。お帰り、どうぞ。」

「はい。では失礼致します。」

恭(うやうや)しく扉を開けたギュンターの手には、何やら怪しげな果物らしきものが入ったカゴを持っている。

1人で窓際に立ち、しきりに外を覗く双黒の魔王に、

「陛下、どうなさいました?」


「え?…あ…うん。何でもないよ。で、どうだった?久しぶりの帰郷で、みんな喜んでたんじゃない?」

窓辺にもたれたユーリは、そう言ってギュンターを出迎えた。

どうやら、護衛のウェラー卿コンラッドは不在のようだ。


「ええ…久しぶりでしたので、色々と…。…おや、コンラートはどこです?」

「んー。今日は午後から剣術の指南だって。」


ユーリは、つまらなさそうに外を指差し、小さく溜め息をついた。


「そうですか。でも兵士達にとっては、これ以上ないお手本ですから、我慢なさいませ。」

ギュンターは、お土産に持ち帰ったという、得体のしれない果物を差し出した。



「………なにこれ?」


ユーリを、一見ブドウにも似た形をしている毒々しい色のそれを受け取る。


「これは、我が領地で100年に1度しか収穫されない珍しい果物で、名を“トッカスマ”といいます。」


「…トッカスマ。食べられるの?…これ…。」


「ええ、もちろんです。100年に1度の貴重なもので、どうしても陛下に召し上がって頂きたくて…。」

ギュンターは「さぁ食え、食べてみろ。」と言わんばかりにスミレ色の瞳をキラキラさせている。


「…う。………じゃあ、1個だけ…。」


ユーリは、仕方なく一粒摘むと、覚悟を決め口に放り込んだ。


「あれ?…美味しい。」


「そうでございましょう?このトッカスマは、我がフォンクライスト家に代々伝わる幻の一品でございまして…初めて実をつけましたのは、遡ること………」


トッカスマについて、熱っぽく語り始めたギュンターの後(しり)目に、愛しい恋人コンラッドに熱い視線を向けるユーリだった。





「………でございますから、お召し上がりになる時は、食べ合わせには、お気をつけ下さいませ。………陛下?」


「へっ!?…あ…はいはい。十分気をつけるよ。ありがとな。」


………しまった。良く聞いてなかった…。でもまあ食べ過ぎなきゃ大丈夫だって事だよな。


取り繕うように笑って返事をしたユーリは、部屋を出るギュンターを見送った。



まさか、この後とんでも無い事が起こるなんて…

思いもせずに…。




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