今日からマ王!
□〇〇とお家騒動
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「渋谷ーっ。いつもんトコ行くか?」
クラスメートの井島が有利に声をかけるが、
「ごめん。用事があるんだ。」
「なんだ?デートか?」
「そんなんじゃないよ…///。」
………なんてな。
今日は、コンラッドがあっちからやってくる日だ。
夏休みも終わって、学校も始まり…一端こっちに帰って来たオレだったが、試験やら学祭の準備やらで…日々を忙殺されていたのだ。
オレは、逸(はや)る気持ちを抑えつつカバンを掴み校門を出た…。
「渋谷君、待って。」
不意に名を呼ばれ振り返ると、オレの学校の制服とは違う制服の女の子が2人立っている。
「…オレ?」
「…う…うん…///。」
はにかみながら、もじもじする女の子の傍で、
「ほらっ。しっかりしなよ。今日こそは言うんでしょ?」
と、叱咤激励するスラリと背の高い女の子。
はにかむ方は、長い髪を2つに束ねた清楚な感じで…、勢いの良い方の髪はベリーショートでキレのある顔立ちの活発そうな感じの子だった。
「ごめん。オレ急いでるんだけど…。」
「あ…あの…っ///。」
それっきり、口を開かない。
「…ちっ。面倒くさいね…まったく。」
「…だって。」
口ごもる女の子に舌打ちしながら、かわりに言葉を継いだ。
「あのさ。この子、あんたの事好きなんだって。…あーもー。なんで私が言わなきゃなんないんだよっ!」
片手でガシガシと頭を掻きながら乱暴な口調で話す。
…あの…そんなに怒らなくても…。
「まるちゃん…ひどいよ。そんな風に言わなくたって…。」
………まるちゃん。
顔に似合わず、可愛い名前だ…。
思わず噴き出しそうになったオレに、
「……何が可笑しい?」
ドスのきいた声で凄まれ、慌てて謝った。
「ごっ…ごめんっ!」
「…で?…返事は?」
更にたたみかけられ、一瞬何のことかわからず…返事をするのに逡巡すると、
「…お前…どんくせぇな。私の話を聞いてなかったのか?…それともあれか、今時多い優柔不断の軟弱男か…?。」
…今…この状況で、こんな事を思うのは不謹慎かもしれないけど…アニシナさんにソックリだ。
「…あの…渋谷君、ごめんなさい。突然告白した上に、まるちゃんが失礼な事言って…。」
…あっ…///。…そうだ…オレ今…告白されたんだった。
「いや…あの…。急に言われても…。こういう事に慣れてなくて…。それにオレ…好…」
やんわり断ろうとするオレに、
「はっきりせんかっ!」
まるちゃん…激しいね。ならば最後まで喋らせてほしかったよ…。
「まるちゃん…やめてよ。渋谷君…ごめんね。今度また出直すから。」
猛獣使いのように、まるちゃんを宥めすかしながら…その子はペコリと頭を下げた。
「…名前くらい名乗っとけば?」
幾分大人しくなったまるちゃんは言った。
「…あっそうだった。私は、蒼井花梨です。まるちゃんは、蒼井真昼です。」
「2人とも同じ名字なの?」
「悪いか。二卵生双生児だ。」
…こりゃまた…全然違う双子だ。
「わ…悪かないけど…意外だね…。」
有利が苦笑いすると、
「…じゃあ。」
そう言って花梨ちゃんは、もう一度頭を下げるとまるちゃんを引っ張って行った。
「…なんだありゃ…。」
小さく溜め息をついた有利は、2人の後ろ姿を見送った。
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