今日からマ王!
□〇〇と剣術指南
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「坊ーちゃん、お呼びですか?」
とぼけた声とともに、ヨザックが窓枠からヒョイと逆さまに顔を出した。
「…ヨザック。どっから出て来んだよ…まったく。」
「こう見えて、結構忙しいんですよ。…っと…あれぇ隊長はぁ?」
片肘をついたユーリは、つまらなそうな顔をして
「…剣術指南…だってさ。」
あーなるほど…と納得顔のヨザックは、軽業師顔負けの軽快な動きで窓から入って来た。
「よっ…っと。それで、ほっとかれて膨れていらっしゃる…と。」
「……別に、膨れてるわけじゃないよ…ふてくされてるだけだ。」
……大差ないでしょう…と、口走りそうになったヨザックは慌てて口を塞いだ。
「…で、俺に用事ってなんですか?」
「うん。剣の使い方を教えて欲しいんだ。」
「…剣?…そりゃまた、どうしてです?」
「ほら、オレってさ…こっちに来て、すぐコンラッドに指導してもらっただけじゃん。でもって、それっきりだし…。」
「必要が無いからじゃないですか〜?」
スラリと長身でオレンジ色の髪を持つヨザックは、ニヤリと白い歯を見せた。
「だって、必要最低限の基礎くらいは学びたいじゃない?。自分の身は自分で守れるようにさ。」
「眞魔国一の剣士、…隊長が守ってくれるでしょ?」
「…それは…。……そうだけど…。」
漆黒の瞳を曇らせる眞魔国の魔王は、テーブルに頭を押し付け、はぁ〜と溜め息をついた。
「ははぁ〜ん。さては坊ちゃん、隊長にかまってもらえなくて…寂しい…とか?」
「それも、無きにしも非(あら)ず…ってとこかな…。コンラッド…全然かまってくんないし。」
つまらなそうに、ユーリは窓の外に目を向ける。
「ふ〜。…ではユーリ陛下…伺いますが、剣術に何を学びますか?」
「…なにって。守るのさ…。自分の身くらい……自分で。」
「…剣で?…どうやって…?」
「剣で止める。」
「その後は?」
「んー?…それだけかな。」
「攻撃は…しないんですか?」
「なんで?」
キョトンとしたユーリを見て、ヨザックは溜め息とともに笑みを浮かべた。
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