今日からマ王!
□〇〇とサラ[後編]
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「ベリエス殿…そこをどいて下さい。」
怒気を含んだコンラッドの地を這うような声音が響く。
「ウェラー卿、少しでいい…待ってもらえないか。」
「……待てる訳などないだろう。」
愛しいユーリの身が汚される寸前のこの状態で待つ理由など…コンラッドにはなかった。
「お願いだ。サラレギー陛下が…人に対して本当に心を開くことが出来るか…瀬戸際なのだ。」
「……そのためにユーリが傷ついても良いと?」
コンラッドの鋭い眼光がベリエスに向けられた。
「……頼む。」
ベリエスも扉の前から一歩も引かない。
「出来ない。…我が魔王を、1度ならず…2度までも心に傷を負わせる事など………。」
コンラッドは剣の柄(つか)に手をかける。
「…ベリエス殿。今…貴公と剣を交えたくはない。頼む…どいてくれ。」
ベリエスもやむを得ずと、双剣に手をおいたが…
その手をすぐに離した…。
「サラレギー陛下は…初めて人に対して恋心を持ったのだ。今まで、裏切られる事への畏れから…私以外そばに置くこともせず…心を開く事もなかったのに…。飾り気のない真っすぐな御気性を持たれた魔王陛下に出会って、少しずつ変わられて来ておられるのだ。」
「……だからといって、魔王陛下を…ユーリを…サラレギー陛下に渡すわけにはいかない。」
コンラッドが扉に向かって踏み出すと…
「……コンラッド。…入ってくるな…。」
「ユーリ!」
扉の向こうから、ユーリの頼りなさ気な声が聞こえる…。
「大丈夫だから……ベ…リエスさんと…お茶でもして来いよ…。」
「ユーリ!何を言ってるんですっ!」
扉に向かいコンラッドが声を荒げた。
「…コンラッド…オレを信じろ。これは…命令だ。」
「…ユーリ…。」
コンラッドは、やや俯きながら扉の前から数歩後ろへ下がった。
「…ベリエス殿…ユーリに何かあったら、俺は…サラレギー陛下を許さない。覚悟しておいてくれ。」
「……ウェラー卿…。」
目を閉じて、強引に心を鎮めようとするコンラッドの姿に、小さく頭を下げるベリエスだった。
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