今日からマ王!
□+愛はチョコと共に+
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+愛はチョコと共に+
バレンタイン拍手文
コンコン
…ガチャ
「陛下…おはようございます。」
「陛下…?」
いつもなら、愛らしい寝顔にキスをしてユーリを起こしていたコンラッドは、ベッドにいないこの城の主に驚く。
「…………ユーリ。」
コンラッドは、素早く踵を返すと、部屋を飛び出した。
その頃…ユーリは厨房でチョコ作りに勤しんでいた……。
「あちっ!」
「陛下っ!大丈夫でございますか?」
隣には、あまりに危なっかしいユーリの手付きにオロオロしている料理長が立っていた。
「うん、大丈夫。ごめんな、仕事場占領しちゃって…」
「それは、よろしいのですが…。おっしゃって下されば、私どもが…。」
ユーリは、溶かしたチョコに指を突っ込み火傷寸前の指をふーふーしながら、
「…いや。これはオレがやらなきゃ意味がないんだ。」
そーっ…と、溶かしたチョコを型に流し込み、あとは固まるのを待つばかりだった。
コンラッドの足音に、ホッとひと息つく間もなく、ユーリは身を隠した。
もちろん、人差し指を口元にあてて“オレは、いない”のアピールをして料理長に口止めする。
「失礼する。…こちらにユーリ陛下はいらっしゃらなかったか?」
「え?…あ…いえ…。」
料理長は冷や汗を浮かべて答えた。
「…そうか。では、見かけたら俺に知らせてくれ。頼んだぞ。」
「は…はい。わかりました。」
コンラッドが、いつになく慌てているので、ユーリをかくまった事がバレたら…と、料理長は涙目だ。
「ごめん料理長っ!」
ユーリは両手を合わせて拝むように謝った。
ユーリは、コンラッドが外に向かったのを確認して、型に入れたチョコを持って慎重に部屋へと戻って行った。
「さてと…あとは固まるのを待って、リボンをつけたら出来上がりだ。」
寒い今の季節、チョコが固まるのは、造作もない事で…あっという間に固まったチョコを箱にしまうと、リボンをかけた。
「よし。完成。」
タイミングよく、ユーリを探していたコンラッドが部屋に戻ってきた。
「ユーリっ!戻っていたんですね…良かった。」
「…お…おはよう。…コンラッド。」
「ユーリ。どこへ行っていたんです?1人で出歩いたら危ないでしょう」
額から、うっすらと汗を滲ませたコンラッドはユーリを抱きしめた。
「ごめん。コンラッド。心配かけるつもりはなかったんだけど…。」
「ユーリ?」
ユーリは、持っていたリボンをかけた箱をコンラッドに渡した。
「…これは?」
ユーリはコンラッドの軍服をつかんで引き寄せると啄(ついば)むようなキスをする。
「…好きだよ。コンラッド…。」
「…まいったな。朝から慌てさせられた上、愛の告白にキスまでされては…怒るに怒れない…。」
「へへっ……///。バレンタインだからね。オレが告白する日だよ。いつもみたいにコンラッドがキスしたり愛の言葉を囁やいたら、オレの計画が台無しになっちゃう。」
無邪気に笑うユーリの手を握り…
「…火傷してますね。」
「いや。違うよ。しそうになっただけ。」
コンラッドは、指に口づけると…
「ユーリ…愛しています。」
「オレもだよ。コンラッド…愛してる。」
ユーリは甘えるように、コンラッドの胸に顔をうずめた。
[おわり]