今日からマ王!
□○○救出作戦!?
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「いたぞっ!魔王だ!」
「よしっ!追えっ。捕らえろ!」
大シマロンの兵達が、森を逃げる有利を見つけた。
「……やべっ。坊ちゃん、こっちです。」
ヨザックが有利の手を引いて森の奥へとわけ入った。
「ちょっと。ヨザック速いって!オレ転ぶって!」
絡まりそうな足を必死に動かし、有利は、ヨザックについていく。
「坊ちゃん、あと少しですっ。あそこに隊長達がいるはずです。」
「はぁはぁ…うんっ」
目が霞むほど走る有利は、朝のロードワークの距離を少し延ばして、足腰を鍛え直した方がいいかも…と、頭の中でのん気に考えていた。
「ユーリっ!」
包帯でグルグル巻きだが、コンラッドの姿が見えて少しだけ安心した矢先、
「うわっ!?」
頑張っていた足がついにもつれて、派手に転んでしまった。
「あそこに、ウェラー卿もいるぞっ。今度こそ逃がすな!」
大シマロンの兵士の一人が叫ぶと、赤い石を持った数人が、石を翳した。
幾筋もの赤く光った帯が重なり、一つになると、稲妻のように、有利達の行く手を阻む。
「坊ちゃんっ危ない!」
ヨザックが有利の腕を引いて間一髪稲妻を避けた。
「あっぶねーっ!ヨザックありがとな。」
足元の焦げた土を見て、ゾッとする。
「お礼は後で聞きます。今は、走って!」
余裕のないヨザックの声に、どれほど緊迫した状況なのか伝わってくる。
「う、うん!」
有利は体を起こし、走り出した。
「また、来ますよっ!」
ヨザックの声に上を見上げると、ひときわ大きな赤い光が今にも降ってきそうだった。
「ユーリっ!危ないっ、そこから離れてっ!」
コンラッドの声に弾かれたように、走るスピードをあげると、その稲妻は、落ちることなく有利達に向かってきた。
「ヨザック!離れろ!狙いはオレだっ。」
有利は、振り返ると、足に力を込めヨザックの前に立った。
「坊ちゃんっ!ダメだっ!やめ……っ!」
全身に青い輝きを帯びた有利は両手を突き出し、稲妻を受け止めた。
突き抜ける電流のような痛みが、有利の体をはしる………。
「……っく……ヨザック……コンラッドを…あいつ…ケガしてて動けないから…。」
稲妻は絶え間なく、有利を襲うが、今引くわけには行かなかった。
「坊ちゃんっ!」
「いいからっ、オレに構うな……。ヨザック…コンラッドを……早く…連れて逃げろ……。」
「しかしっ!」
「行けって!……命令だ…コンラッドを…頼む。ここは、オレがくい止めるから。」
有利の必死の頼みに、
「わかりました。陛下……必ず、このグリエちゃんが助けに来ます。……それまで、ちょっと、頑張っててくださいね。」
「うん。」
有利が笑って頷く。
ヨザックは、コンラッドを抱えると眞魔国の船が待つ入り江に向かった。
「ヨザックっ。離せっ!ユーリがっ!あのかたを置いていくなんてっ!」
「隊長ぉ、暴れんなって!あんたを船に置いたら、すぐ助けに行くって!」
「俺のことは、いいっ!陛下を…ユーリをっ!」
「………コンラッド…無事…船にたどり着いたかな……。」
稲妻は、有利の体力を確実に奪って行き限界が近いことが自分でもわかる。
「坊ちゃーん!」
………ヨザックの声が聞こえる…って事は、コンラッドは……無事に……船についたんだな……良かった。
有利は、弱まって来た稲妻を手のひらで操り、一気に地面に吸収させる。
「……はぁ……はぁ…」
「坊ちゃん!大丈夫ですか?」
「………うん。…コンラッドは?」
「大丈夫です。今、船の中で手当てを受けていますよ〜。」
「………そっか…良かった。」
小さく笑って、有利の体は崩れ落ちた。
「坊ちゃんっ!?」