ロマンチカ
□+愛の呪文+
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「ただいまーっ。……ん…?」
バイト帰りの美咲が玄関を開けた途端、甘い香りが鼻をついた。
「……チョコ…?。」
美咲は靴を脱ぎながら、誰か来てるのか?と頭を巡らせる。
…薫子さんかな?
そんなことを思いながらリビングの扉を開けると、キッチンに立っているのは秋彦で…オマケに部屋中が玄関で嗅いだ香りより、焦げ臭くて…
「ああ、美咲お帰り。」
ネクタイをキッチリしめた秋彦が微笑む後ろのオーブンから黒い煙がうっすらと立ちのぼっていた。
「ウ…ウサギさんっ!うしろ、後ろっ!なんか焦げてんじゃないの!?」
慌てて美咲が指をさすと、
「ん…?ああ。」
秋彦は、のんびりとオーブンをあけると、
もわんと、煙が解き放たれ黒い塊がブスブスと音を立てている。
「あ"ーもーっ!何やってんだよっ。」
秋彦も、それを見下ろし眉を寄せると
「完成品と…ちょっと違うな…。」
得体の知れないそれと、A4のコピー紙に印刷されたものを見比べる。
秋彦が持っていた物体からは何なのか、どうにも想像がつかない美咲はチラッとコピー紙を視界に入れた。
………スポンジケーキ?
「…ウサギさん。これ何すんのさ?」
絶対といってよいほど料理をしない秋彦がキッチンに立っているだけでも貴重な光景なのに、スポンジケーキ作ってるなんて…
「チョコケーキ作ろうと思ってな。今日バレンタインだし…お前にプレゼントしようと思って…」
………バレンタイン。
毎年、美咲があげていたのだが、今年はバイトが忙しくバレンタインという事すら、うっかり忘れていた。
「…う。ゴメン…オレ何も準備してないや。」
美咲は素直に頭を下げる。
秋彦は、優しく美咲の髪を撫でると
「…いいさ。今年は俺が美咲に贈るんだから。イギリスじゃ、バレンタインは男が贈る習慣だし…。」
…オレも男だけど?
ツッコミを入れたいのは山々の美咲だったが、今回は忘れていたので分が悪い…。
かといって、秋彦の気持ちのこもったスポンジケーキとなるべきものは、すでに食べ物としての役目を終えていた……。
しかし、差し出されれば食べるだけの覚悟も出来ている。
「ダメだな…。」
珍しく落ち込んだような秋彦の表情に
「大丈夫だよ。ウサギさんがせっかく作ってくれたんだもん、オレ何でも食べるしっ。」
美咲は、がっかりしている秋彦を慰めるつもりで言ったのだが、
手のひらを返したように秋彦の表情が一変する。
「…………なんでも?」
何か思いついたように形の良い唇に笑みを浮かべる。
「…な…なんだよっ!?」
「スポンジケーキはダメになってしまったが…それに塗るはずだったチョコクリームは、幸い無事だ…。」
…無事っていうより
既製品(出来合い)だよね?……それ…。
「…チ…チョコクリーム…だけ食べるってのは…ちょっと……。」
後退りする美咲の腰を引き寄せた秋彦は、ちゅっ…っと啄むように口づけた。
………いや…忘れてたのは…悪いと思ってるよ。
…だからって
…これはないんじゃないの!?これはーっ!
美咲は、心の中で力一杯叫んでいた。
半裸にされた状態で、ベッドの上で正座している美咲は、秋彦のソレから目を逸らす。
…ソレ…とは、秋彦の怒張した芯にタップリと塗られたチョコクリームで……。
「…遠慮しなくていいぞ。」
優雅に横たわる秋彦の姿は、本当に艶めかしい。
「……ムリだから///。」
「美咲は、何でも食べるって言った…。」
秋彦は、むぅ…と顔をしかめる。
「そ…そりゃ、言ったけど…。」
「……美咲…おいで。」
秋彦の瞳に見つめられ…仕方なく伸ばした手に体を預けるように傾けた。
「…ど…どうやれば…いいか…わかんねぇよ///」
「……俺が…いつもしてるみたいにすればいい。…わかるだろ?」
美咲の頤(おとがい)を優しく上げた秋彦は諭すように微笑んだ。
顔を真っ赤にして小さく頷いた美咲が、秋彦のソレの先端にそろりと舌を這わせると秋彦が、甘い息を洩らす。
「………ウサギさん?」
「…いい。このまま…続けて…。」
「…え…ぁ…うん…///。」
秋彦の先端を口に含むと甘いチョコクリームが口腔にひろがり…
ちゅう…と、吸い上げて秋彦の様子を窺うと、美咲の口淫を欲情を宿した榛色の瞳が見つめていた。
美咲は、どうにも恥ずかしくギュッと目を瞑り、秋彦のソレを奥まで啣えると甘い吐息が美咲の鼓膜をくすぐった。
「……っ…美咲っ…。」
自分を呼ぶ声に答えるように上下させると美咲の口の中で更に硬度をまして…快感を追うように突き上げられた熱塊に、喉の奥を刺激され思わずむせてしまう。
口から跳ねるように現れた秋彦の形に、ぞくぞくと腰の辺りが熱くなる…。
「…美咲…勃ってる。」
「…うるさい///。」
美咲は毒づいてから、また秋彦のものを啣えた。
秋彦の形を舌で感じると、ますます自分のものも熱を帯びてしまう。
………触ってほしい。
「美咲…見ててやるから…自分で扱いてみろ。」
そう言って秋彦は美咲の頭を撫でる。
堪らなく快感が欲しくて…美咲は自身に手を伸ばしゆっくり扱いた。
いつもなら…こんな恥ずかしいことしないのに…。
オレは…どうしちゃったんだろう。
秋彦のものを啣えたまま快感に潤んだ瞳で見上げる美咲に、
「…美咲の口のまわり…クリームだらけだ。」
秋彦は蕩けるような笑みを向ける。
「…じゃあ…キレイにしてよ…。」
美咲は、秋彦を跨ぐようにして顔を近づけた。
「…もちろん。」
美咲の口についたクリームを丁寧に舐めとり…その唇から滑り込んだ秋彦の舌は口腔を味わうように動きまわれば、美咲も舌を絡めてくるのだった。
「…ぁ…はぁ…ぁ…。」
キスに夢中になっている美咲の腰を引き寄せた秋彦は、腹につくほど反り返った美咲の芯を緩く扱く。
「…ぁ…はぁ……っん……ぁ…。ウサギさ…」
「……感じてる美咲の顔…もっと見たいな…。」
秋彦は自身を美咲の窄まりにたて、美咲の腰を下ろしていくと…クリームと美咲の唾液で濡れている熱塊をゆっくり飲み込んでいった。
「……バレンタインは、好きな人に告白するんだったな…。」
「…え?…うん。」
「…愛してるよ美咲。お前を愛している。」
…秋彦は、その日
呪文のように愛の言葉を囁き続けた。
(おわり)
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