ロマンチカ

□運命の人
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「美咲。ちょっと、これ見て。」


恋愛小説執筆中であるウサギさんの仕事部屋にコーヒーを運んできたオレに、一枚の紙が渡された。



………なんだろ?


とりあえず目を通すと、何やらデートの計画のようなものが箇条書きしてある。


@ドライブ
A昼食
B映画
Cフリータイム
D夕食


「なにこれ?」


「今、書いてる恋愛小説の参考にしようと思ってな。」


「それはわかるけど、なんか漠然としてるっていうか…。それにCフリータイムって?」


「自由時間。」

秋彦は、なぜそんな事を聞くのか…と、真面目な顔で首を傾げる。

…いくら…オレが英語が苦手と言っても、それくらいわかるよ……。

「だから…なんのためのフリータイム?」


「明日、付き合ってくれ。」


あの…ウサギさん。

…話…全然かみ合ってないんですけど?


「…そんな…急に無理だよ。オレ、バイトあるし…。」

「休めはいいだろう。」

…こんにゃろ。

「急には無理っ!オレだってピンチヒッターなんだから。ついでにオレの財布もピンチなの!」


いつもの事だけど、オレの都合なんてお構いなしで…。

八つ当たりを承知の上だが、罪もないコーヒーカップを乱暴にテーブルの上に置いて部屋を出た。







………とはいえ、ウサギさんのあれは、今に始まった事じゃないし…。


マジで困ってるのかもしれない…。


前にウサギさんが考えたデートは、ちゃんと下調べしてくれてた。


今回のは、そんな感じじゃなかったから…ホントに取材だったりして…。



……悪いことしちゃった…かな。



明日のバイトって、丸川書店でアンケート集計だったよな。

相川さんに…相談してみるか…。



美咲が携帯を開き相川に電話しようとすると…ちょうど、彼女から電話がかかって来た。


「もっもしもし?」

『あっ美咲君?明日の事なんだけど…。』

「相川さん、明日なんですけど早めに行ってもいいですか?」

『ええ、かまわないわよ。この電話も編集部にアンケート全部届いたから、早めに来てくれるようにって事だったから…』

「じゃあ、あの…今から行ってもいいですか?明日、ちょっと用事が出来ちゃって…どうしても早めに済ませてしまいたいんです。」


『全然OKよ。集計の結果が早く出るんだもの。こちらも願ったり叶ったりよ〜。』


徹夜すれば明日の朝まで終わるよね。


「ありがとうございます。じゃあ…あとで。はい…失礼します。」



「…さてと。」

携帯を閉じた美咲は、秋彦の仕事部屋へと踵を返した。




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