ロマンチカ
□+線香花火+
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「ウサギさん、花火やろっ。花火っ。!」
「………花火?」
「夏の風物詩だよ?1回くらいやっとかないと。」
線香花火を掴んだ美咲は、えっへんと胸を張る。
「…線香花火か…いいんじゃない庶民的で…。」
タバコに火をつけ、線香花火を手にとり…繁々と眺めた。
「……………で、どうやるの?」
……おいっ!
「ウサギさん、花火やったことないの?」
「…そうだな。手持ち花火は、小さい頃に林間学校でやったことあるけど線香花火は…ないな。…どっちに火をつけるんだ?」
「…えっとね…ここに火をつけて…じっとしてると、玉が出来るんだ。落ちそうで落ちない…地味なんだけど綺麗だよ。」
「…そうか。」
秋彦は小さく微笑み、しゃがむと線香花火をろうそくに近づけ火をつけた。
小さな玉からチリチリと火花が出始めたのに、秋彦はスクっと立ち上がってしまい、ポトンと玉が落ちてしまった。
「……………。…あ。」
「あ"ーっ!ウサギさん、花火揺らしちゃダメじゃんっ!火ぃつけたら、じっとしてろよ。ったく、理想角度は斜め45度っ」
美咲は、お手本とばかりに線香花火に火をつけた。
線香花火から、小さな火花がチョリチョリ出始め…2人並んで暫し眺めていると、
「…美咲。」
「なに?」
秋彦に呼ばれて顔を上げると、
……ちゅっ。
「………っ///。」
美咲は、不意打ちのキスにピクンと体を震わせた。
…ポトン。
「あっ!落ちたっ!」
「……下手だな。」
くわえたタバコの煙りを揺らした。
「違うだろっ。急にウサギさんが、キ…キスするからーっ…///。」
美咲は玉の落ちた線香花火を掴んで猛然と抗議すると、
秋彦は、くすっと笑い美咲の腰に腕を絡めて引き寄せた。
「…線香花火の…心髄を教えてやる…。」
「ウ…ウサギさんっ…///耳…耳噛むなって!…それに、し…心髄ってなんだよっ?離せって、おいーっ!」
ひょいと、肩に担ぎ上げられた美咲は、「教えてやるよ。」と言って榛色の瞳を細めた秋彦に、そのままベッドに連行された。
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