ロマンチカ

□ウサギとミサキと山。
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……このところ



ウサギさんが部屋から出て来ません。



原稿…煮詰まってるのかな……。



リビングでお茶をすすり、最近ハマっている塩豆大福を口に頬張りながら秋彦の仕事部屋を見上げた。



「…ったく。何日目だよ。…つうか…オレ何個目だ?」


甘味が控えめで、ちょっぴり塩っ気のある大福は、油断すると食べ過ぎてしまう。





大福の入った箱のフタを閉じ、濃いめのお茶で口の中に残る仄かな甘さを強引に流し込んだ。





「…さてと、散歩にでも行くか…。」


ずっと雨ふりで…青空を見るのは久しぶりだ。





……ガチャ


「…美咲。どこかに行くのか?」


くわえ煙草で仕事部屋から出てきた秋彦は、思いのほか元気そうだ…。


「…あー。散歩行こうと思って。久しぶりに天気もいいし…。」



秋彦は、美咲が指さす方を見て榛色の瞳を細める。


「散歩?。俺も一緒に行く…。」


「…原稿…終わったのかよ?」


「…まだ。」


………なに遠い目してんだよ。


「じゃあ書けっ!締切近いんだろ?」


「…ちょっと気分転換。」



…まぁ。確かに部屋に籠もってたし…


「でも、締切間近だし…今となっては一分一秒が惜しいわけだし…。」


秋彦は、片眉をあげると

「…お前。相川に似てきたな。」


と、不快感たっぷりだ。

「なんとでも言えっ!ウサギさんが原稿おとして、相川さんの愚痴聞くのはオレなんだからなっ」


「………。外の空気吸ったら、なにか思い浮かぶかも…。」


………このやろ。


「じゃあっ!パソコン持ってけよ。いつでもどこでも書けるようにさっ!」


秋彦は、くすくすと笑いを堪えながら承諾した。


……別に…一緒にいたくないとか、仕事が終わるまでウサギさんを閉じ込めておきたいとか、そんなんじゃないけど……。


「…美咲。」


秋彦は、不意に呼ばれ振り返った美咲の口角をぺろっと舐めた。

「〜〜〜っ///。なにしやがるっ!」


「…粉付いてた。甘い…。」


「…あ。大福食べてたから。…ってか舐めんなよっ!」


「キスしたい。」


秋彦は、美咲の細い腰を引き寄せると、啄むように口づける。


「ウサギさんっ///。」


口腔に侵入してきた秋彦の舌は…美咲の味を確かめるように、ぬるんと動き回り、


「……甘いな。」


唇を離した秋彦は、嬉しそうに微笑んだ…。






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