ロマンチカ
□シェフ=ウサギ
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「……はい?…い…今…なんと……?」
………なんかオレ…疲れてんのかな?
今…ウサギさんが変なことを言ったような気がする……。
「だから…何か簡単なものでいい。料理を教えてくれ…と言ったんだ。」
「…どうしたんだよっ?…ウサギさんが料理なんて…。…ははは……夢だ。……絶対…夢だ。」
「…美咲。お前は誤解している。…人間なんでも、やれば出来る。」
………ふつうならね…。
「……どういう風の吹き回し……?」
「…別に…今書いてる小説の参考にしようと思って…。キッチンに立って料理をする者の気持ちを知りたいだけだ。」
「…ふーん。…でも…無理じゃね?」
「…どういう意味だ?」
「…言ったまんまだけど?…だって、ウサギさんほとんどやった事ないだろ?…オマケに見たこともないスペシャル料理作るし…。」
「うまかっただろ?」
…ふっ。…あの後オレは…トイレと御友達になったけど……。
…まあ…いいか。
「でー?どんな料理作りたいんだね?宇佐見秋彦君……?」
美咲が、えっへんと胸を張ってみせると、腕組みしてタバコをくゆらせ上から目線の偉そうな生徒は、
「…切って焼いたくらいのでいい。」
……それって…料理?
「…切って焼いただけの料理ですか?」
「気持ちがわかれば、いいだけだから。」
「…んな料理…なんかあるかな……?」
うーんうーんと考えながら冷蔵庫を覗く美咲の姿を、秋彦は楽しそうに眺めている。
「…あっ。これなんかどうかな…。」
美咲が取り出したのは、チーズとバジルとコショウだった。
「……これで…どうするんだ?」
秋彦は、まったく予想がつかず首をひねった。
「まぁ…やってみてよ」
美咲は、包丁を秋彦に握らせると、
「まず、このチーズ切ってみて…。」
「…ああ。」
チーズに刃をあてると、グイッと一気にいったが……
「…美咲…チーズが包丁から離れないぞ?。」
……剥がせよ。
「あの…ウサギさん。手は、ふたつあるんですから…有効に使って下さいませよ…。」
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