ロマンチカ

□ウサギのぬくもり
1ページ/6ページ





……ガチャ。


「……出来たぞ。」

「先生!ご苦労様ですっ。ゆっくり休んで下さい。じゃ美咲君、私、社に戻るから先生の事お願いねっ!」


「あ、はい。相川さんも気をつけて…。」

相川さんは、頷きながら原稿を掴むと、慌ただしく部屋を出て行った。


…例の如く…相川さんをヒヤヒヤさせたウサギさんは、ソファーにどっかり腰をおろした。



「…なんか飲む?」


「うん?…ああ。頼む……濃いめのコーヒーがいいな…。」

ウサギさん…疲れた顔してる……。


「…わかった。」


オレがキッチンに足を向けると、


……ゴトン。


………聞き慣れない音に振り返った…。


そこには不自然に腕を投げ出し、ソファーに横たわるウサギさんの姿があった。

「…ウサギさん?」

小説を書き上げると、大抵こうなるのは、わかってるけど……

……なんか…いつもと違うような…?


「ウサギさん?寝るなら布団に行けよ。そんなとこで眠ったら風邪ひくって。」

いつものように体を揺すってみる…。

「…あれ?…ねえ…ウサギさん…?」


…なんでこんなに体…冷たいんだ?


「ちょっ……ウサギさんっ!どうしたんだよ」


ウサギさんの顔は、とても青白くて…


「…大丈夫だ。」

消え入りそうな小さな声を口元だけで伝えてきた……

…でも…ホントに、いつもと様子が違うんだ…。


「どうしたんだよ。いつもは死にそうなのに、具合悪そうなウサギさんなんて初めて見たぞっ!」


「…なぁ。美咲…死にそうなのと…具合悪そうなのと…どっちが危ないんだろうな……。」

…こんな時でさえ減らず口をたたく。

「……っ。知るかっ!それより医者行っとく?ってか、行こっ。」


「…やだ。」






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ