ロマンチカ

□秋野宮談論
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ピロロ…ピロロ…

「美咲か。大学終わったのか……?」

『うん。でも、今から大学出るから少しだけ遅れるかも…』

「迎えに行こうか…?」

『大丈夫だよっ。1人で行けるし、それにあの車で来られたら目立ってしょうがないよ。』

「早く会いたい。」


『今朝会っただろっ。お願いだから待っててくれよ。あ、電車来た。近くなったらまた電話するから。じゃあね。』


…プツン。

「…ったく。」

秋彦は、仕方なくラウンジで待つことにした。

しかし、端正な顔立ちをしている上に、超がつく程有名な小説家である秋彦は、目立ち過ぎ…居心地が悪かった。

仕方なく、人目につかない席を陣取り、コーヒーを飲んでいると…


「あの…宇佐見さんですよね?」

さっきから、秋彦はこの手の声のかけられ方にウンザリしていた。

チラリと視線だけ送ると、それは見覚えがある顔で…。

「君は…。弘樹の…?」


「はい。ご無沙汰しています。」

野分は、丁寧に頭を下げる。

「ああ…。どうしたんだ?こんなところで…。」

「今日は、小児科の教授の講演がありまして…。もっとも…今日このホテルでは、他にも学会やら、研究会があるみたいですけど…。」

「…そうか。だからやたらと人が多いのか…。」

秋彦は、納得しながらも、明らかに不快だという顔をする。


「座れば?…どうせロビーは人であふれかえってるんだろ?」

実は…野分もあまりの人の多さに身動きがとれず、落ち着くまでラウンジで時間をつぶそうとしていたのだ。

「え?いいんですか?」

「かまわないよ。」

野分は、一礼した後、遠慮がちに同じテーブルにおさまった。


「君は…弘樹と付き合って何年?」

「…ええと…知り合って6年になります。」

秋彦に、“付き合って”何年と聞かれた野分は、微妙に言葉をすり替えた……。

「…そんなに警戒しなくてもいいだろう?」

秋彦は、小さく笑う。

「…笑うんですね。」

野分の一言に対して、

「…弘樹から君の話ばかり聞かせられるよ。」

と、答えた。

そんな言葉に、やや驚いたような野分は、

「…そうなんですか?」

「ああ。」

そう言ってタバコをくゆらせると、やわらかい表情をみせる。


そこへ、

「あー。すいません。そこ空いてます?…って、あれ?…君は上條んとこの…だよね?」

「…宮城教授?」

意外なところで、意外な人々が集まってしまった……。






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