ロマンチカ
□ウサギとミサキともう一度
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「…ウサギさーん?…起きて…ます…かぁ?。」
大人気ベストセラー小説家、宇佐見秋彦大テンテーは、締切間近の原稿に取り組んでいたが、今朝早くに完成したらしく、安らかな眠りについていた……。
(…うーん。このまま寝かせてあげたいけど…。言わないで出掛けるわけにも行かない…。)
寝起きの悪い秋彦を無闇に起こすことを、良しとしない美咲は、小さく囁くように声をかけた。
……………。
案の定、秋彦は泥のように眠っている。
「……。しかたない。書き置きしてくか…。」
今日は大学が休みで、角先輩に誘われサークルのみんなと、日帰り温泉旅行に行くことになっていた美咲だったが…。
言ったら反対されることは、わかっていたので、なかなか言い出せずにズルズルと出発当日まで来てしまった。
「…はあ。言えないよなぁ…。今更だもんなぁ」
「………なんの話だ…?そんな格好してどこに行く?」
「ひっ!ウ、ウサギさん起きたの?」
のっそりと、起き上がった秋彦の顔は120%の確率で、不機嫌だ…。
「美咲…どこへ行く?」
「あ…あの…。ちょっと日帰りで…お、温泉に…行こうかなぁ……なんて…。」
「……1人で?」
「いや…。えっと…角先輩と、温研サークルの人たちと……。」
「…あいつと?」
秋彦は眉根を寄せて不快感を全面に押し出した。
ガックリ肩を落としながらも美咲は、食い下がった。
「先輩だけじゃないよ。他の人たちだっているし…。」
「…だめだ。」
秋彦は、即答する。
「なんだよっ!日帰りだし、夕飯までには帰るし、いいじゃん!」
「美咲っ!」
横暴だ…。オレだって、付き合いがあるんだっ!
「行ってくるっ!ウサギさんは、徹夜続きで疲れてるんだから寝なよっ!」
美咲は、玄関のドアを思いっきり閉めた。
「…ウサギさんのバカ。…わからずや…。」
美咲は、ドアの前で俯いた……。
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