エゴイスト
□発熱のあとは…。
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《今晩7時、いつものファミレスで飯食おう。》
今日…ヒロさんがメールをくれた。
短いんだけど…嬉しい。
いつもメールは必要最低限で《帰ってくるのか》とか《何食いたい》とか《わかった》…とか…。
一番短い最高記録は……《うん。》だけ…。
俺が思うに昔ながらの電報と同じくらい短いと思う…。…いや…それより短いかも…。
…もっと、話したい。
会えない時は、特にそう思う。
「草間先生。お願いします。」
「はい。今行きます。」
野分は何度も読み返していた携帯を閉じ、カバンにしまいロッカーをしめた。
「さて…もうひと頑張り…。」
ヒロさんとの待ち合わせまで、あと2時間弱…。
「………有り得ない。」
弘樹は、【店内改装のため臨時休業】のプレートの前で立ちつくしていた。
「……ったく。店内改装ってなんだよ…。」
眉間にタップリとシワを寄せ…携帯を開いた。
「野分…出るかな?」
長い呼び出し音のあと、『只今近くにおりません…。』のメッセージ。
「野分のやつ…マナーモードにしてねぇし……。これじゃ留守電も入れらんねーじゃねぇかよ。」
弘樹は、携帯をポケットにしまうと、
「まいったな…。」
ファミレスで論文作りながら待つつもりだった弘樹の予定は大幅に狂ってしまったのだった。
帰るにも中途半端で、どっかで待つにも手ごろな店もない。
「しょうがねえな。ここで待つか…。」
弘樹は、近くにあったベンチに座ると、鼻の頭を冷たいものがかすめた。
「……雪?今年はよく降るな…。」
はらはらと舞うように降り出した白い雪は、やがて水分を含んだ霙(みぞれ)に変わった。
「…オレ、日ごろの行ないは悪くないはずだぞ?むしろ、誉められてもいいくらいだ…。」
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