エゴイスト
□それは…愛
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………オレは…やっぱりこいつが嫌いだ…。
「あれぇ?上條さん。今日は、どうしたんです」
小児病棟の入り口で会った津森は、オレ達の関係を知る数少ない1人だ。
「…野分に着替えを届けに来ただけだ。」
「あ、そうですか?ご苦労様です。…野分に会っていきます?」
……イヤな言い方する。
それを言うなら「呼んできます?」…だろっ。
…だから、会いたいのをガマンするハメになる。
「…別に。これ…渡してくれ。着替え入ってるから。」
オレは着替えの入った紙袋を津森に手渡した。
「はい。確かに預かりました。俺が責任持って必ず渡しますから。」
……なんで、「俺が」…ってところに力入れるんだよ。
……いちいち癇にさわるやつだ。
「じゃ…。よろしく。」
………野分に会いに来たのに、津森の顔見て帰ることになるなんて…。
踵を返したオレに、
「野分…呼んで来ましょうか?」
と、わざとらしい声をかけられ…振り向きそうになる自分をこらえる…
「呼ばなくていい。…どうせ忙しいだろうし。」
振り向かず、返事だけをして、その場をあとにした……。
「…………はぁ。」
野分…元気かな…。
しばらく野分の顔見てないから…。
………会いたかった。
病院から出て、建物を見上げ……自然とこぼれるため息を、歩道に撒き散らして…とぼとぼ歩くオレの後ろから…
「ヒロさんっ。」
…野分だ。
………オレが振り返ると…そこには白衣のままこちらに走って来る野分の姿があった。
「…良かった。…間に…合って…。」
……そんなに急いで走って来なくてもいいだろうに…。
「…寒いんだから出て来なくて良かったのに。」
「…だって…ヒロさんに逢いたくて…。」
………オレもだよ。
「……仕事…忙しいのか……?」
「…はい。季節がらインフルエンザの患者さんが多くて……。」
「……そっか。お前は大丈夫か?あんまり自分を過信するなよ。」
「ヒロさんこそ…俺いない時に風邪引かないで下さいよ?。」
…また、野分の心配性が始まった…。
「ばか言ってろ…。オレは、大丈夫だから。早く戻れよ。」
「はい。すみません。でも、あと一言だけ…。」
そう言って、オレの耳元に顔を寄せると、
「ヒロさん。愛してます……。」
小さな声で囁いた…。
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